第7回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなで応援しよう! J-KIDS大賞2009
受賞校インタビュー

J-KIDS大賞 2008年度 受賞校インタビュー (1) 土堂小学校

J-KIDS大賞は、発足から6年が経ちました。入学したての児童も6年の間に心身ともにたくましく成長するように、小学校ホームページにおいても、技術や情報量における充実ぶりは、各校、目を見張るばかりです。次なるステップは、どんな学校なのか、子どもたちがどうホームページに関わり、そこからどのようなコミュニケーションが生まれているのかを捉えていくこと。J-KIDS大賞2008の受賞校は、まさにそのお手本となる学校が揃いました。

総務大臣賞広島県 尾道市立土堂小学校

土堂小学校:松原隆二校長、山根僚介教諭、貝川充洋講師、児童
取材:選考委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会

元気な学校生活が手に取るように伝わってくるのが、土堂小学校のホームページです。3度目の全国大会表彰となった今年、「総務大臣賞」の栄誉に輝きました。豊富なコンテンツはもとより、レイアウトは見やすく楽しくデザインされており、ホームページが学校生活の中でしっかりと機能しているのを感じます。運営の背景とその取り組みについて伺いました。

学校の視点松原隆二校長

「知・徳・体」調和のとれた学校づくり

尾道市は、学校選択制を導入しています。多くの子どもたちが、学校選択で土堂小学校区外から本校へ通っています。本校はコミュニティ・スクールでもあり、本校の目指すミッションについて、事前に賛同いただいた方が本校を選択しており入学していただくのです。そのため保護者の協力体制はしっかりしており、教育活動についても関心が非常に高い。PTA総会の出席率もおよそ9割という高水準です。児童数は、平成14年は65名でしたが、学校選択によりどんどん増えており、6年間で5倍となりました。学校は楽しいかという児童へのアンケートでは、現在のところ97%が楽しいと答えています。どのような目標を掲げ、教育しているのか。子どもたちがどのような学校生活を送っているのか。情報発信は欠かせないことであり、そのためのホームページであるととらえています。学校評価も毎月行い、分析したものを年に数回公表しています。本校の教育の実践を視察したいという声は多く、全国の教職員の方に、ホームページを見ていただいているようです。県外に住むご家族からも「孫が学校生活をどう送っているか、毎日見るのが楽しみ」といった声も届いています。

昨年で創立108年を迎えた、長い歴史に支えられています。一方で新しい試みにも取り組んできました。3年間の推進体制を経て、平成17年度からコミュニティ・スクールとして始動。ミッションステートメントを学校運営協議会が建議し、これを実現するために教育活動を行っています。ステートメントは次の5つです。

1.「基礎・基本を大切にし,確かな学力を育む学校」
2.「尾道の魅力を追求する学校」
3.「コミュニケーション能力を育てる学校」
4.「学ぶ力と遊ぶ力と生きる力を育む学校」
5.「児童・保護者・地域がともに学び運営する学校」

つまり、バランスのとれた教育を進めていくということです。基本的生活習慣をきっちり身に付けさせるため、合い言葉は「早寝早起き朝ご飯」として、確かな学力と豊かな心、健やかな体の育成を図っています。

始業は8時20分ですが、朝7時ぐらいから、子どもたちは登校し始めます。正門前の70段の石段を、上級生が自主的に掃除。下級生がその横を通る際は「おはようございます」と挨拶。元気な声が響きわたります。地域に何かできることはないかと、周辺のゴミ拾いも率先して行っています。外で遊んだり、スポーツの練習をしたり、本校の児童は朝から活発です。子どもたちの能力や可能性を最大限に引き出すのが我々の務めです。「確かな学力を育む」ための試みとして、週に3 回、15分ずつのモジュール授業を実施。国語を15分、算数を15分といった具合に切り替えることで、基礎学力の定着や集中力の向上をはかっています。また、各分野の専門家に学校に来ていただき、指導していただいています。郷土学習では子どもたちは積極的に地域に出かけて学習し、大人よりも詳しくなっているほどです。休日には、学んだ場所に親子で見学に行き子どもが説明している姿もよく見かけます。こうした取組みにより尾道が好きと答える児童の割合が高いのも特徴です。これからグローバル時代を生き抜く子どもたちが、住んでいる地域のことも知らずに、外へ外へと出て行くことなどできません。自分たちの生活している地域をしっかり学ぶことで芽生える地域への愛着が、グローバル社会の中で生き抜く力を育むと思います。

単に、活動を紹介するだけのホームページではない。まず目標があり、それを具現化していくためにどのような教育課程を編成し、活動しているのかが明示された、筋の通ったものにしたいと意識しながら運営してきました。これに対する評価も公表し、また次の改善に結びつけていかなければならないと思います。そのためにも見ていただいた方の声は必要なのです。声を聞かせていただくのはありがたいこと。その声が前向きなものであれば、子どもたちも教職員も、次への意欲がより高まっていくと思います。

現場から山根僚介先生 貝川充洋先生

保護者に喜んでもらいたいという思いで発信

3年前にリニューアルされました。意図したことを教えてください。

貝川先生私は3年前に赴任したのですが、初日で、いい学校に来たなと感じました。職員は校章が入った名札を付けるのですが、その姿が格好良く見えたのを今も覚えています。ホームページに関して当初は、子どもの顔写真は控えめに扱っていたのですが、保護者の大多数から、もっとはっきり顔がわかるような写真を載せてほしいという要望を受け、今のかたちになりました。まず保護者の方に喜んでいただき、さらにホームページを見た地域の方、全国の方に土堂小学校はこういう学校だと分かってもらうことを目標にやっています。教員も保護者も頑張っている。その姿を発信したいという気持ちもあります。

山根先生リニューアル以前より担当していました。リニューアルにあたって念頭に置いたのは、見る人が見やすいホームページにするということでした。まずトップページは軽くすること。フレームを使わない、画像は処理して軽く、トップページは1画面内におさまるようになど。発信者は受信者を配慮し、軽いページにすることが不可欠であると考えました。

子どもたちの表情が前面に出て、積極的に参加しているのが印象的です。

保護者の理解があり、その要望を反映して顔写真はダウンロードして保存できるようになっています。リスクを考えて以前は、保存できないフラッシュを使っていたのですが、それでもパソコンのキャッシュには残ってしまうので、万全な対策とは言い難い。これを強化するには、キャッシュに残らないような仕掛けをつくるしかないと思います。こちらに関しては現状では、限界があると言わざるを得ません。

顔写真だけでなく、ブログや他校との交流についても、ひとたび子どもたちをネットの世界に出すと、やはり何かしら予想外のことに巻き込まれる恐れはあります。善意で書いたことが相手を傷つける場合もある。本校は校長の指導のもと、必ず複数の教員ですべての文言に目を通した上でアップしています。即時性では劣っても、子どもを守るためにも、チェックすることは必要だと思います。

子どもたちは、どのように運営に関わっているのでしょうか。

リニューアルでブログを始めたのですが、報道委員会とパソコンクラブが参加しており、双方から35名の子どもたちが参加しています。ホームページに児童が参加する際の最重要ポイントは、いかに簡便であるか。子どものスキルでできる範囲は限られています。本校ではコンピュータを2年生から扱いますので、タイピング能力については心配ありませんが、その前に情報を発信していくうえで必要なモラルを備えているかどうかも問われます。ですから、モラルの教育は不可欠です。2年時に、メールを送るときは相手の気持ちを考えるなど、簡単なところから進め、4年時では著作権の基本的な考え方が身につくカリキュラムを実施しています。この授業を経た4年生以上をブログ運営の対象にしています。

最近は、各学年の担任の先生もブログに参加するようになり、社会見学や修学旅行などに出向いた場所で、すぐにアップロードするようになっています。すると、保護者から「見ました」と、喜んだ声もすぐに届きます。この積み重ねが、学校が信頼を獲得する手だてになると感じます。その実感があると、日常忙しい先生たちも積極的に参加するようになると思います。

忙しい中でも対応できるのが、ブログの力ですね。今はどの教員も携帯という端末を持ち歩いていますから、これを生かさない手はない。携帯を使っての受送信の仕方をわかりやすく整備しておけば、イベント先での対応も増えていきます。そうすると保護者からすぐに声が帰ってくる。保護者の声は、経営層を動かす一番の原動力になります。保護者から肯定的な反応が返ってくれば、ぜひやろうということになる。ブログをやっていてよかったと思います。

どんな学校?ホームページは楽しい?児童の声

「笑顔があふれている学校です」

「読んでいる人にわかりやすく、思ったことをちゃんと書く。返事をもらうと、うれしいです」

「自分が書いたことがほかの学校の人とかに見られているかと思うと、すごいわくわくする」

「普通の文章だと読んでいて面白くないから、笑いみたいなのも入れて工夫して書いています」

「委員をやる前は、大変そうだなと思ったけれど、やり出したら達成感みたいなのがあって。すごい、楽しいと感じました」

「パソコンが家にないんだけど、放課後さわるうちにできるようになって、パソコンがどんどん楽しくなってきました」

「卒業したら、卒業生のページをやってみたい!」

編集後記
教育目標と発信がリンクした学舎

コミュニティスクールという、新しい学校運営のかたちとホームページがまさにぴったりとリンクした土堂小学校。この学校で学ばせたい、学びたいという保護者と子どもたち、そしてこの学校のすばらしさを伝えたいという教員が、ホームページを上手に活用しながら結びつき、そのネットワークを強くしているのが印象的です。笑顔あふれるホームページは、学校生活をより一層、生き生きとしたものにしているようです。

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