第9回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなで応援しよう! J-KIDS大賞2011
受賞校インタビュー

J-KIDS大賞 2011年度 受賞校インタビュー 大平台小学校

文部科学大臣賞静岡県 浜松市立大平台小学校

大平台小学校:柿澤佐江子校長、稲垣令子教諭、鈴木美智子養護教諭、原田文恵栄養士、読み聞かせボランティアの皆さん、児童
取材:実行委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会事務局

今から7年前、浜松市に21年ぶりにできた大平台小学校。新しく広々とした校舎に一歩足を踏み入れると、子どもたちが元気な声で挨拶をしてくれます。大平台小のホームページでは、先生・児童・保護者がそれぞれホームページで記事を発信し、日々の日常生活にまつわる新しい情報が毎日更新されています。これは、学校の先生全員がホームページ作りに参加することで実現できました。「チーム大平台」を合言葉に、全職員で更新に取り組んでいる大平台小学校には、みんなが参加しやすいブログ運営の秘密があるようです。

学校の視点柿澤校長

みんなでボートを漕ぐように。学校が地域の中核となるように。

この地域は平成7年ごろから土地区画整理事業が始まり、住宅地として整備されました。そこに新設された学校です。自治会ができてまだ13年。学校ができて7年。その5年目に私は赴任しました。本校赴任にあたって、「まったく新しい街で求められる『学校の役割』って何だろう」とずっと考えてきました。
そのとき思い出したのは、前任校で統合による閉校が決まったときのこと。卒業生が、学んだ学校を見せてくださいと学校を訪ねてきてくれたんです。みんなすごく懐かしく思ってくれて、「今度、同窓会をやろう!」という話になりました。うれしかったですね。学校は通っている子どもだけのものではなく、卒業生にとっても心のよりどころである『母校』なんだと。こんなふうに、取り巻く人すべてを含んだ地域環境が学校のイメージとつながるのでは、と思えたのです。

大人になっても、学びや心の根っこはここにあるんだよ、という想いをもってもらいたい。小学校は、地域住民や保護者と一緒にできることを考えられる『地域のみんなをつなぐ学校』であり続けたいと思いました。


開校当時の大平台小学校も『地域のみんなをつなぐ学校』になるために、まずは学校の情報を伝えるべく、職員が全員分の名刺を作って地域に配ったり、地域コミュニティの核になるために、職員とずっと議論を重ねてきたりしたそうです。区画整理地で、まだ地域のつながりが無かったので、住民の方と直に会ってお話したり、昼間仕事をしている方には、こちらから働きかけて的確な時期や時間帯に情報発信をしたりするように努めたそうです。
着任以来地域のいろいろな方にお話させていただく機会がありましたが、地域の方や保護者の方もつながりの場を求めていることが伝わってきました。そんな方々の声を聞くこと、そして学校の情報を家庭や地域に発信していくこと、双方を「つなぐ」役割が私たちのホームページにあるのではないでしょうか。

次に本校の全職員と児童で運営するブログについて、お話します。私としては、学校運営は校長が一人で頑張るのではなく、学校全体がチームとしてみんなで取り組んで動くものだと思っています。モーター付ボートで一人がズバーッと突き進むのではなく、手漕ぎボートでみんなとソーレソーレと掛け声をかけて進む感じです(笑)。チームでものごとを進めることで、仲間の大切さを実感できます。ブログも同じです。特定の職員の発信でなく、全職員で発信してこそ、より多面的に学校広報ができます。細かい運営やルールについては、担当教諭が経験を積んできているので安心して任せています。

みんなで情報発信をしていると、保護者からの反響も一層うれしいものです。頂くコメントはとても温かく、心強い応援団からメッセージが届いているようで、とても励みになります。林間学校や修学旅行などの宿泊ブログ中継ではアクセス数が1日6000ほどにも上るんですよ。パソコンだけでなく携帯電話からも閲覧し、気づいたときに反応してくれているようです。学校からの一方通行な発信だけでなく、双方向のやりとりがあることにとてもやりがいを感じますね。これからもホームページ上で学校の情報をどんどんPRしていきたいと思います。

現場から(1)稲垣教諭、原田栄養士、鈴木養護教諭

当番制ブログは、立場が違う視点で発信出来るから面白い。

どのように、この「全員参加型」の体制にされたのでしょうか。その過程を教えていただけますか?

稲垣先生私が赴任したのは4年前。職員ブログはすでに立ち上がっていましたが、月数回程度の更新頻度のものでした。まずは、有志の先生数人で週3回ほど更新していったのが始まりです。同時期に給食ブログを栄養士の先生に依頼して立ち上げました。翌年には、情報広報委員会の子どもたちのブログも立ち上げ、その頃には、職員ブログは学年ブログ委員の職員が交代で毎日更新するようになっていました。こうして少しずつブログの「登場人物」を増やしていった結果、3つのブログが毎日更新されるようになり、4年目には管理職も巻き込んだ、全教職員の参加が実現しました。

全員参加となれば、40人の職員がいる本校ではブログ当番が回ってくるのは2ヶ月に1回ほど。年5回の更新であれば、それほど負担にならないということを職員が理解してくれました。誰か一人が苦労するのではなく、お互いが助け合って情報発信をする。その意識が職員の間に芽生え『みんなでやっている』感が生まれてきます。先生同士の価値観の共有にもなるので、とても良い取り組みではないでしょうか。

ブログが苦手な先生もいらっしゃると思います。どうやって参加を促していくのでしょうか。

ブログの作業が苦手な先生にはパソコンで文章を作成してもらい、同じ学年の先生が代わりに記事をアップしています。ブログのアップ作業は、できる人が協力すれば済むことです。また、書き方をアドバイスするなど、個人に責任を負わせないようフォローする工夫もしています。

内容は、それぞれの担当分野や得意分野から伝えていけばいいのではないでしょうか。生徒指導主任は生徒指導的な内容、特活主任は児童会など。先生たちの紹介にもなりますし、それで学校の特色を伝えられます。また、少しずつ異なる意見から、新しく見えてくる視点もあるはずです。普段ブログを書かない年配の先生や控えめな先生に記事を書いてもらうと、その先生の意外な個性がでた面白い記事となり、ブログの内容にも幅が生まれます。参加してもらうことで、声を掛けた私たちも勉強になることがよくあるんですよ。

当面の課題は何でしょうか?

やはりホームページやブログの更新、継続でしょうか。私が転任になった際に、誰が引き継いでくれるのかという問題は避けられません。今後のことを考えて、今から先生方に声を掛けながら運営をしていますが、さらに、自然とブログが引き継がれる文化と運営しやすい仕組みを作っていきたいです。

また、引き継ぎは教職員だけでなく児童の間でも同様にブログが引き継がれる形が理想ですね。2月から5年生のブログ活動が始まりました。私が今すごく良いなと感じているのは、下級生が情報広報委員会に憧れをもっていることです。先輩の活動を尊敬して、伝統のようにブログが引き継がれる体制を残せたらと思っています。

学校でのホームページの引き継ぎが難しいという声をよく聞きます。ホームページサイト作りの研修は各地で行われているのに、「継続的な運営の仕方」についての研修はないのも一つの理由ではないでしょうか。そういったノウハウを共有する機会が、今後もっと各地で増えていくといいですね。

最初に声を掛けられて、ブログ運営の関わり方に不安はありませんでしたか?

原田栄養士ブログを書くことは初めてでしたが、給食に対する想いや、毎日の給食の様子を、多くの方に見ていただけると思うと、ドキドキわくわくしました。こういう機会を与えられ、毎日楽しくブログを書かせていただいています。
毎日、給食がどのように作られ、子どもたちがどんな様子で食べているかをわかりやすく伝えたいと思っています。献立の意図や、その日の給食の説明をするだけでなく、給食時間の様子の写真や子どもたちの感想を載せています。また、保護者の方にも知っていただきたい、栄養のことや旬の食べ物、地場産物のことなども掲載しています。

給食ブログは1日に600~700、多いときは900アクセスがあります。保護者の方や子どもたちから、「○○がおいしかったので、また出してください。」や「レシピを教えてください。」など、コメントがあるととても嬉しいです。リクエストをいただいたレシピや自分が知って欲しいレシピをコツコツと掲載し、ついに100種類にもなりました。ご家庭でも活用してくださっているようで、「すぐお母さんに作ってもらいました。」という声や、時には「自分で作ってみました。」という子もいて、活用されていることを実感しています。

宿泊行事のブログ中継を頼まれて投稿する立場としてはいかがでしたでしょうか?大変だとは思いませんでしたか?

鈴木養護教諭林間学校や修学旅行のブログ中継投稿は、担当から「けが人や病人が出たらストップしていいです。無理しないでできる範囲でお願いします。」と言っていただけたので、始めやすかったです。最初は、頼まれたからやらなくちゃ!という感じでしたが、ブログ中継の写真を撮っていると「お母さんが中継を楽しみにしているので、私を写真に撮って!」という児童が現れました。中継ブログに3日間で20000アクセスも来たり、先生方からも「コメントが面白い!」と言って頂けるようになったりして、だんだんブログを更新することが楽しくなって、もっとリアルにこの活動の楽しさを中継したいと思うようになっていました。


現場から(2)読み聞かせボランティア 〜 ぽっかぽか通信 〜

できるところからでいい。保護者が学校ホームページに登場!

どういう経緯で学校のホームページに参加するようになったのですか?

読み聞かせボランティア大平台小では、有志の保護者メンバーが集い、毎週水曜日の朝に一クラスずつ読み聞かせ活動を行っています。以前から、保護者の会員サイト内で、子どもたちに読んだ本を共有してきました。そして、活動に参加していない保護者の方はもちろん、もっと多くの人に学校のことを知ってもらいたいと考え、平成23年度から学校のホームページでも情報発信を行うようになりました。
HP更新の経験のないメンバーにとって、参加するには敷居が高く感じられました。でも、もっと自分たちの活動を発信したいという想いから、学校のホームページに参加することに決めました。学校のホームページを見るついでに、私たちの活動も知ってもらい、より多くの人がボランティアに加わってくれるといいなと思っています。

保護者の間で、運営において工夫している点は何かありますか?

ボランティアで運営しているので、楽しんで情報発信をしていきたいですよね。文章を書くことに負担を感じてしまったら意味がありません。また、文章を書き慣れていない人にとっては、漠然と記事を書いてくださいと頼まれても難しい。ですから、最初は誰かにインタビューをして、その受け答えを記事にしていました。
理想としている発信は、文章が保護者本人の言葉で書かれている「活きている記事」かしこまった文章ではなくて、くだけた感じだけど、きちんと為にもなって面白い!というのがいいですね。難しいですが、その人が感じたことを素直に書いてもらえたらと思っています。
もっともっといい発信をしていきたいので、かかわってくれる人を増やして活動を続けていきたいです。学校なので、年々代表が変わることもありますが、保護者が主体的な気持ちで賛同してくれて、引き継がれることを期待しています。

かかわってくれる保護者が増えれば、参加の敷居は低くなります。おかげさまでお話隊メンバーは40人になりました。本当にありがたいです。学校とつながる最初の窓口として、私たちの活動をいい意味で利用してほしいと思います。最初は小さなことでもいいから、何かにかかわることで色々な広がりができたらいいですね。この学校は外部からでも声が掛けやすいんです。大平台小学校には多くの人が集いあえる懐の広さ、温かさがありますよ。

大平台小学校のホームページで記事を書く上でどんな工夫をしていますか?秘密を教えてください!児童の声

「読んでいて飽きない内容や、その日にあった出来事を書くようにしています。例えば「ストレス解消法」について。ストレスが溜まったらどうするか。私の場合は音楽を聴きますということを紹介しました。」


「前に書いた人とブログの内容が一緒にならないように気をつけています。」

「私は個人的にブログをやっていますが、日々の出来事を書いています。写真を入れて、わかりやすくしています。」

「送られてきたコメントには、なるべく早く返信するように心がけています。」

「自分のブログ投稿に全国からコメントが入るのがとても楽しみです。」

「以前は日常の中で思うことやニュースについて書いていましたが、最近は私たちの学校生活のことを書くようになりました。」


「みんなでブログノートを活用しています!」

編集後記

大平台小学校には、地縁も何も無いところからスタートしたという背景があります。コミュニティの力が問われている時代に、積極的に情報発信をして地域の中心を目指す姿勢は本当に素晴らしいと思いました。一人の教員だけでなく、全職員、児童、そして保護者が、学校のホームページから情報発信をする仕組みは、全国でもまだ珍しいことです。継続することの難しさはあるものの、かかわることが楽しいという仕組みは全国の小学校の良いお手本になるのではないでしょうか。これからも地域の方々がどんどん参加されることで、みんなで育てる教育の仕組みができていく可能性を感じました。

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