第10回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなの毎日は宝物! J-KIDS大賞2012

J-KIDS大賞2012表彰式の模様

村井先生の課外授業「私たちとインターネット」

会場に「授業開始」のチャイム音が響き、10周年を記念した特別企画の始まりです。「日本のインターネットの父」と呼ばれ、私たちが当たり前のように使っているインターネットの礎を築かれた村井実行委員長から「インターネットとは何か」を教わる課外授業です。

インターネットは、1995年にみんなが使うようになりました。まだ20歳にもなっていませんね。では、インターネットとはどういうものなのでしょう。今日は、4つのポイントをお話します。

1.デジタル技術とは

 

数字のことを、英語ではdigitと言います。
デジタルとは「数字にすること」という意味です。実は、デジタル技術は「数字にすること」で成り立っているんです。デジタルのテレビもカメラも音楽プレイヤーも、扱う動画や写真・音楽は全部数字でできています。数字の並びには、好き嫌いも良い悪いもありません。だから、数字は人類全体でやりとりできるものなのです。数字をやりとりすれば、映像も、音楽も、地球上の誰とでも共有できますが、その基盤となるとても自由な環境が、インターネットなのです。
ちなみに数字の計算をすることは英語でcomputeというので、数字の計算をする機械をコンピューターと言います。コンピューターの技術がデジタル技術の頭脳で、インターネットは、数字をみんなで共有するための、自由な環境なのです。

2.キツネの足元にあるのは…?

 

皆さん、イソップ物語の『キツネとブドウ』のお話を知っていますか?
この話は、よく私が「インターネットはこれだ!」と説明するときに使います。キツネが美味しそうなブドウに一生懸命飛びついている姿は、人間が夢とか面白そうなことに飛びつこうとするのに似ています。あれがやりたい、これがやりたいと思った時にぴょんぴょん飛びつこうとします。
キツネは、なかなかブドウに届かずに、とうとう負け惜しみを言って、ブドウをあきらめましたが、もし、キツネの足元に台があったとしたらどうでしょう?ブドウに届くようになったでしょう。キツネの足元の台のように、物事に飛びつくための基盤となるのがインターネットなのです。インターネットの台があると、世界のお友達と話したい、と思った時に、飛びつきやすくなります。希望がかなえやすくなるのです。

3.太陽になりましょう

 

キツネが美味しそうなブドウに飛びついたように、何に飛びつきたいかを決めるのは、私たち自身です。無理やり、「あのブドウに飛びつきなさい!」と言われても、あまり乗り気がしないでしょう。それと同じように、インターネットでも「新しい技術が出来たからこれを使いなさい!」と言われるより、本当に良いものができた時に、「これを使いたい」と思うものなのです。
これは、同じくイソップ童話の『北風と太陽』と似ています。無理やり「これをやれ!」という北風ではなく、「こんないいことができるんだ」と自然に人の気持ちや行動をうながす太陽でいたいと思います。
皆さんの小学校のホームページは太陽です。「こんな良いホームページが出来るなら、僕たち・私たちも作れるようになろう!」と全国のお友達が思っています。 こうしなきゃいけないんだよ、こんなことしちゃいけないんだよ、という北風の発想では、新しい技術や物事に対して、「何となく心配だからやめとこうよ」となってしまいます。J-KIDS大賞も、始めた頃は心配の声もありましたが、素晴らしい小学校をほめただけ。太陽の発想なのです。

4.2つの地球

 

地球の姿を思い浮かべてみてください。
数字は、地球の中で自由自在に、国境を越えてもやり取りできます。地球にはたくさんの人がいますが、それを一つの世界にしているのがインターネットです。まさに、「グローバル社会」です。一方、国ごとに分かれて、言葉も文化も違う社会を「国際社会」と呼びます。
皆さんは、世界中のお友達と力を合わせて、世界の中で活躍し、インターネットのグローバル社会の中で、健やかに成長していくでしょう。一方で、日本がこれからどうなっていくのか、どのように世界の中で役立っていくのかを一生懸命考えてもいきます。
国が集まってできている地球の他に、境目のない一つの空間としての地球が、インターネットによって私たちの前にはっきりと姿を現しました。
このように、2つの地球が存在するのです。
インターネットを使って育っている皆さんには、この2つの地球が公平に見えるでしょう。皆さんが、インターネットを使って、世界をつくっていくんです。
時には国ごとに喧嘩をすることもあります。国ごとに競争して、より良くなることもあります。でも、インターネットによって、世界中がひとつの地球なんだ、と分かるようになりました。今、世界中の人類は、同じものを目にしています。インターネットは、「地球全体がひとつの世界」というグローバルな世界をつくったのです。この2つの地球があれば、明るい新しい未来をつくっていくことができるでしょう。インターネットは、未来をつくっていくための新しい役割を担っているのです。

村井先生との質疑応答

村井先生もドキドキ、高度な質問が会場から続々と

引き続き、質疑応答の時間になりました。会場の子どもたちからどんな手強い質問が飛び出すかと、村井先生もドキドキしています。

横書きのHPをつくるのは簡単なのに、縦書きを作るのが難しいのはなぜですか?

これはまさに、私が日本の課題だと思っていることです。
ホームページをつくる時、中身の文章を、縦書きでも横書きでも表現できるようにしましょう、更には、上から下、左から右だけでなく、右から左などあらゆる方向から文章が書けるようにする必要がある、と言われています。私自身も、そうなるように頑張らなきゃいけないと思っています。
最初に電子メールをつくったとき、コンピューターの専門家は英語でやり取りをするだろうから、世界中飛び回るのに、横書きの英語にするのが便利だと思っていました。しかし、やがてみんなが使うものになるならば、電子メールは世界中の言葉が使えるようにしよう!という発想を最初持ったのは、日本なんですよ。だから、実は君のような提案が、電子メールが各国の言葉で使えるようになったきっかけなんです。

世界の子ども同士でつながることはできますか?

できます。
世界の子ども同士でつながる時の問題の一つは、時差です。時差があるので、「一緒に話す」のが難しい。ところが、facebookやメールで文章を書いておくと、お友達は、次の日朝起きて見てくれます。特にアジアのお友達とは、時差もそんなにないので、十分リアルタイムでつながることができます。世界中でつながれば、こっちは夏で、あっちは冬、こっちは昼、あっちは夜、という経験ができますよ。
もう一つは言葉の問題がありますが、今は、インターネット上で「自動翻訳」ができるようになっているので、そういう技術も助けになって交流ができるのです。

これからどんな技術が導入されていくと思いますか?

これからは、皆さんが作っていくものだと思うので、正直どうなるかわからないです。今までの話をすると、最初は「世界中のコンピューターをつなげなきゃ」だったのが、「世界中の人がつながる」ように。さらに、今は「世界中のモノがつながる」といわれています。たくさんのデジタルデータ(数字)が、私たちの未来をつくっていくのだと思います。あと、以前は漫画やSF映画の世界にだけ存在したものが、どんどん現実のものになってきているんです。これからのヒントは漫画にあるかもしれないですよ。

はじめに考えたころと比べて、今のインターネット社会をどう思いますか?

驚くことに、インターネットを使うことは「人間の権利」だ、という議論が世界で起こっています。
日本では、80%くらいの人がインターネットを使っていますが、世界で見ると、人口の30%くらいしか使っていません。これから、世界が日本のようになっていくのです。私たちは、これから、世界のお友達の役に立てるはずです。

正しい情報を得るためにはどうしたらいいですか?
害になるウィルスは、この世から消えますか?

残念ながら、ウィルスはなくならないでしょう。
良い情報や、良いお友達や、良い人に助けてもらうことと、悪いウィルスが出てきたら、早く駆除することが大切です。私たちが、普段の生活で、無菌状態で生きているわけではないのと同じです。悪いものが無くなる訳ではないけれども、益々健康な社会をつくっていくことが大切なのです。

Windows7と8は何が違いますか?

新しい技術では、新しいことが起こっています。
私たちが、いかに自然に、直観的に扱えるか、を追求しているからです。
新しい技術は、チャンスがあれば、使ってみるべきだと思います。それを、是非皆さんが周りの大人に教えてあげてください。

世界でインターネットを使うときに主に気をつけることはありますか?

皆さんは十分なレベルに達していますから、私から言えることはひとつだけです。ホームページは、たくさんの人が見てくれています。だから、見てくれている人の気持ちになることが大事です。私たちは何をやりたくて、見てくれている人に何を訴えたいのか。ホームページはコミュニケーションで、対話です。見てくれる人のことを考えてつくりましょう。


村井先生からは、「どれも素晴らしい質問ばかりで感動しました」との一言が。子どもたちの素晴らしい発想が、先生をうならせていました。


インターネットの可能性と面白さをたくさん感じさせてくれた村井先生のお話。再びチャイム音が鳴り、特別授業は終了しましたが、数十分の講義はあっという間に感じられました。

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