第8回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなで応援しよう! J-KIDS大賞2010
受賞校インタビュー

J-KIDS大賞 2009年度 受賞校インタビュー 斑鳩小学校

文部科学大臣賞奈良県 斑鳩町立斑鳩小学校

斑鳩小学校:田中幸臣校長、遠藤尊教諭、児童
取材:選考委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会

奈良県斑鳩町法隆寺。歴史と文化が息づく町で、120年にわたり地域の子どもたちの成長を見つめ育んできた斑鳩町立斑鳩小学校。4年連続して奈良県の代表校となり、今年、文部科学大臣賞の栄誉に輝きました。伝承文化を尊重する教育への実践モデル校として、3年生が総合学習の中で「能」を学ぶなど、特色あるプログラムを広く伝えている点が、高い評価につながりました。そこには、よりよい学校生活を目指してホームページに取り組む、先生と子どもたちのまっすぐな視線がありました。

学校の視点田中幸臣校長

子ども目線で情報を伝えていくことが大切

私は一昨年まで県の教育委員会に勤務し、教育の現場からは離れた仕事をしていました。異動が決まってからホームページに目を通したわけですが、最初に、よくこれだけの情報を収集し、まとめているものだと感心したのを思い出します。同時に、本校が3年連続で代表校となっていること、またJ-KIDS大賞で表彰される小学校は、さらに内容を充実させている事実も知りました。

これまでも、担当の遠藤尊教諭は、ほとんど毎日休むことなく、更新し続けていました。ところが昨年度、遠藤先生が担任をもたれたことによる多忙から、更新ペースが一時期乱れてしまったことがありました。その際、保護者の方から「更新ペースが去年よりも遅くなり子どもの出番も減ったが、これは校長の方針なのか」というお叱りを受けたのです。こちらの事情を保護者の方はご存じないので、当然のことかもしれません。関心の高い方は、本当に真剣に、ホームページを見ておられます。

その中心的役割は、子どもたちの行動や考えなど、子ども目線で情報を伝えていくことにあると、改めて気づかされました。また、双方向性を実現することも、大切です。これを意識し、遠藤先生はさらなる力を注ぎながら、児童による広報委員会をつくり、更新を続けてきたのがこの1年でした。

本校の教育目標は「らんらん(爛々)」です。瞳を爛々と輝かせ、笑顔で挨拶し合う、いきいきとした学びの場をつくることを目標としており、そのための一助としてホームページがあると位置づけています。

修学旅行など行事の際は、写真や情報をどんどん送り、アップしています。保護者からは、「先生方も大変なのに、よく送っていただき、ありがとう」と、感謝のメールも送られてきます。もちろん褒めていただくのはありがたいですが、経営者の視点で一番知りたいのは、我々がつい目を背けたくなるようなことへの指摘です。痛いところを突いていかないと、学校は良くなっていかない。ホームページを見た意見はもとより、なぜ学校に砂場がないのかといった素朴な質問まで、メールでやりとりし、改善策は必ず発信しています。砂場に関しては、新たに校庭を掘り起こし設置いたしました。

教育目標や学校の方針については、保護者に対し2度の懇談で説明するなどして、意見を伺っています。しかし通り一遍のアンケートでは、学校活動に詳しい保護者でないと答えられません。質問の仕方には留意しますが、あわせてホームページをご覧下さいと伝え、活用しています。

外部アンケートも行っています。その結果をもとに、次年度のプログラムから方針など、すべてを見直すのです。もしそこに課題があれば、対応策も含めてホームページで公表しています。アンケートは、「良い」何パーセント、「悪い」何パーセントという数字を公表するためにあるのではない。良いところなんて、放っておいてもいいのです。「悪い」部分を公表して皆さんに知っていただき、その先に進むにはどうするかを伝え、考えることが目的なのです。学校評価についても同様で、保護者や地域の方に広く見ていただき、その結果、どうすればいいかという意見を交わすことが非常に大事なことではないかと思っています。

ホームページには様々な可能性がありながら、地域や学校ごとによる温度差があり各校で重ねた経験や情報は、なかなか広まっていないのが実情だと思います。まず、ホームページを運営できる人材を育成していくのが先決です。そのためには、教育研究機関などで公開講座を設けるといったような試みが必要でしょう。

校長会などでも取り上げ、興味のある人を増やしていくことが大切だと思います。初めは真似で構わない。触れることでノウハウは生まれてくるもの。人材を育てていくことも、これからの課題だと考えています。

現場から遠藤尊先生

じっと頑張る子どもたちの素顔を伝えたい

多くの写真と充実したコンテンツで完成度の高いホームページです。制作の苦労などお聞かせ下さい。

遠藤先生ホームページは2003年から始めました。当初は手探りで、ただ一方的に情報を発信していく感覚でいました。しかし授業を記録し、すべての行事に足を運び、ほとんど休みなくファインダーを覗いているうちに、見る人を考えないで撮った写真なんて、はたして意味があるのだろうかと疑問を抱くようになったのです。

子どもと接する時間は、親よりも教師の方が長い。実際に、我々しか知らない子どもの側面はたくさんあります。家族には見せない、子どもなりに外向きに構えた表情などを私たちは知っています。やがて、親はどう子どもを見ているのだろう、どう見たいのだろうと、考えるようになりました。きれいに撮るのは当たり前。子どもたちの一番良い表情を引き出して記録したいと思い、一歩踏み込む気持ちでカメラを手にしています。「うちの子、こんな顔をするんですね」という感想も、よく寄せられるようになりました。

子どもの写真を載せることについては、課題もあるかと思います。

表情を伝えるためにアップの写真を掲載していますが、もちろん悪用されないように万全な対策を施しています。とはいえリスクはゼロになるわけではないので、保護者の方からの理解は必須です。

以前、こんなことを言われたこともあるのです。「前に通っていた学校では、後ろ姿や目をぼかした写真ばかり掲載された。うちの子は犯罪者じゃない。そんな写真を撮るのは、やめて欲しい」と。ああやっぱりそうなんだ、よい表情を伝えたいというこちらの思いと、見る側の願いは一緒なんだ、と確信しました。

さまざまなページの中でも、能の学習を伝えるコンテンツが印象的です。

斑鳩は、能の「大和猿楽四座」である金剛流の発祥の地で、2004年度より総合学習の一環として、3年生が能を学んでいます。(※)それまで僕も能を全然知らなかったのですが、奈良金剛流を主宰する植田恭三先生のご指導を得て、子どもも私たちも多くを学んでいます。

初めは小さな声しか出せなかった子どもたちがやがて謡を覚え、正座にも堪え、舞も身につけるまでに成長しました。その様子を見て、子どもが我慢しないのではなく、我慢するまで大人が待てないだけなんじゃないか、と気づいたのです。大人が我慢しない子どもをつくっている。子どもに「早く来なさい、早く来なさい」と言うから、じっと座っていられなくなるのです。

じっと頑張っている子どもたちの姿を、きちんと伝えたい。その思いがあるから、これだけ一生懸命ホームページに力を注ぐことができるのです。

これは斑鳩の子どもたちだけの話ではなく、全国の子どもも同じ。だから、いろいろなところに配信しなければいけないと思っています。そこに何を見出すか、問いかけながらホームページに関わっています。

※文部科学省と奈良県教育委員会による「我が国の伝統文化を尊重する教育に関する実践モデル事業」の指定校

どんな学校? ホームページは楽しい?児童の声

「広報委員会でブログを書いたり、給食のメニューを知らせたりしています」

「いつも新聞記者になったつもりで、ブログを書いています」

「将来はスポーツ新聞の記者になりたい」

「自慢したいのは、能の授業!」

「大事なのは、けじめと礼儀と挨拶」

「人見知りも少ないです」

「みんな、休み時間は運動場で遊んでいます」

「歴史が長くて、校舎から法隆寺も見えるんだよ」


編集後記
子ども達のありのままの姿を

学校から法隆寺が見えるという、歴史豊かな土地ならでは地域性を、ホームページを使って全国へと伝える斑鳩小学校。能の授業が影響しているのか、背筋をしっかりと伸ばした元気いっぱいの子ども達からは、伝統文化や土地柄を大事にしている誇りに溢れた姿をかいま見ることができました。
「ホームページを通じて、子ども達のありのままの姿を伝えていきたい」というメッセージが印象的でしたが、学校で見たようなイキイキとした児童の表情が、これからも斑鳩小学校のホームページでたくさん見られそうです。

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