第10回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなの毎日は宝物! J-KIDS大賞2012
受賞校インタビュー

J-KIDS大賞 2005年度 受賞校インタビュー (2) 塩尻西小学校

総務大臣賞長野県代表 塩尻市立 塩尻西小学校

塩尻西小学校:三沢正照校長, 長畦明人教諭, 熊谷賢一教諭, 新村岳彦教諭, 増田啓佑教諭, 児童, 保護者の方々
取材:選考委員 豊福晋平, J-KIDS大賞実行委員会

J-KIDS大賞2005で、総務大臣賞を受賞した長野県塩尻市立塩尻西小学校に伺いました。
塩尻市は、長野県のほぼ真ん中。松本盆地の南端に位置し、北アルプスや中央アルプスの山並みを背景に田園風景が広がる美しい町です。日本海側と太平洋側の交通が交差する交通の要衝でもあります。塩尻西小学校は、その中心市街地にある児童数360名程度の中規模校です。長野県の中でも比較的寒いところだそうですが、平成14年に竣工した美しい校舎には、元気に学ぶ子ども達の明るい姿がありました。

現場から三沢正照校長先生

木々おのおの名乗り出でたる木の芽かな

三沢正照校長先生にお話を伺いました。

「信州出身の俳人、小林一茶の句です。春になって雪が融けると、木々おのおのが我は我はと名乗り出て、みんながどんどん成長してゆく、それでいて、最後には調和のとれた美しい春の山ができあがる。子ども達ひとりひとりの個性を自由に伸ばしていきたい。そんな思いでやってきました。一年前、本校に着任したときに、担当の熊谷先生からホームページの取組みについて報告を受けました。正直なところホームページの技術的なことは良く分からないが、これも子ども達の個性を伸ばす大切な取組みだと、とにかくやろうということで続けて来ています。」

個性を大事にする校長先生の思いが、同校を挙げてのホームページの取組みにつながっているようです。
また、ホームページの活用については、過去に切実なご事情もあったとのこと。

「開かれた学校を保護者や地域の方々に伝える上で、ホームページは大切な手段になります。平成14年に新校舎を建設した際、シックハウス問題が起こりました。そのときに、当時の校長はじめ職員が、これではいけない、とにかく学校の情報を積極的に保護者や地域の方々に知ってもらわなければいけないと考えました。そんな中で、ホームページにより、シックハウス問題への学校の対応について情報を公開していきました。学校への信頼を得るための情報公開の大切さは共通認識となり、その後のホームページの運営にはいろいろと苦労が絶えませんが、担当の職員を中心に一生懸命取り組んでいます。」

要はうちの学校を自慢したいという思いで進めてきました

情報教育担当の先生方(新村先生、長畦先生、増田先生、熊谷先生)にお話を伺いました。
若い先生方が中心になって、楽しみながらホームページに取り組まれている姿が印象的でした。

情報機器の教育への有効活用

「塩尻市では、コンピュータの教育利用を目指し、15年ほど前から市をあげて取り組んでいます。エプソン社の本拠地の一つでもあることから、同社のご支援もあります。その意味で環境面では非常に恵まれた学校であるとはいえます。eラーニングであるとか、総合学習での情報機器活用であるとか、積極的に取り組んでいます。」

ホームページの意義と運用

「平成12年度にホームページを立ち上げましたが、当初は教科研究の成果物などを発表するのに特化したページになってしまいました。その後、ちゃんとやろうよ、責任もってやるからと話をして、全国の小学校ホームページを50校くらい見て参考にし、現在のページの基本形をつくりました。うちの売りはコンピュータと英語教育だ、あと、給食も美味しいし、校舎も建て替わるしという、要はうちの学校を自慢したいという思いで進めてきました。」

「校務分掌の中にホームページ係として職員3名が割り当てられていますが、それ以外にも若い先生を中心に有志を増やしています。やってみると面白いよと洗脳しながら(笑)。また、ブログは今年立ち上げたのですが、利用者から見て敷居が低く、これには全職員が関わっています。」

「当初は、更新率やアクセス数といった数値指標が励みになりましたが、今は、内容であったり、いかに楽に運用できるかといったことに関心が移っています。当初は、公立の学校でもあるし、先生個人の色をあまり出してはいけないという思いが強かったんですが、やっているうちに、他のメンバーたちが個人の色を出し始め、それを今すごく面白がっています。例えば、給食日記は、今は新担当の若い先生に任せているのですが、最初は給食の紹介だけだったものが、いつの間にか個人の日記めいて味のあるコーナーになりました。」

「ホームページに対する姿勢は、トップ(校長先生や教頭先生)の考えがやはり大きく影響します。学校によっては、当たり障りの無い内容しか出しちゃいけないという反応もまだまだあります。ホームページを公開する意義を管理職が先生方に上手に伝えていくことが大事です。そしてやはりやってみること。ホームページを公開する良さは、やったことのある人間でしか分からない。全く知らない人との交流が生まれる。返事が来た、つながったといううれしさは次の更新へのエネルギーとなるんだけど、そういう経験が校内で共有化できるといいんです。」

「J-KIDS大賞で3年連続長野県代表になりましたが、今年初めてベスト8、更には総務大臣賞の受賞となりました。実のところ、1年目はJ-KIDS大賞を意識してホームページに色々と手を入れました。しかし、3年目の今年は正直なところ余り手をいれることができていません。ただ、ブログを始めたこと、PTAの会長さんがPTAのページを作られたこと,アメリカとの交流でメーリングリストが立ち上がったことなどで、内容が多層的になりました。」

個人情報保護の問題

「個人情報については、3年ほど前から、4月に一括して事前承諾を取るようにしています。名前の表示は避けられないものの、実名と顔の一致は絶対にさせないというのが原則です。運動着に書かれた名前などはその部分にモザイクをかけるなど、結構神経を使っています。不同意の方もおられますが、その場合は、その児童の写真や学習成果物の掲示はしません。」

6年生の子どもたちに総合(地域調べ)の授業のあとでインタビューを行ないました。ちょっと緊張しながらも、みんな元気に答えてくれました。

授業でどんなことを調べていたのですか?

「障害者の方が安心して暮らせる大門地区かどうか調べています。今、アンケートづくりをしています。」

「工場と大門の人たちのつながりについて調べています。今日は市役所に行って調べてきたことをまとめていました。」

「今度できる市民交流センターのことについて調べています。」

西小のホームページで自慢できることは何ですか?

「地域の人によく分かってもらえるように色々な工夫がされていることです。」

ブログへの書き込みで難しいこと、大変なことは何ですか?

「高学年だけが見るわけじゃないから、低学年とかも見ている人もいるかもしれないし、そのために漢字を使わないようにしたり、あと、敬語も使うように、気を遣わなきゃいけないから大変だと思います。」

授業以外でパソコンを使うことはありますか?

「時々宿題で調べたいことがあったら、使っています。」

「家にパソコンがあるので、だいたい毎日西小のホームページを見ています。あと、音楽が好きなので、CDを調べることもあります。」

「6年のブログというのがあるので、そこを見ています。」

「西小のホームページのリンク集に歴史の年表とかがあって、それを自主学習に使っています。」

ほかの小学校のホームページを見たことはありますか?

「J-KIDSのホームページにリンクが張ってあったから、ベスト8に入っている学校を見ました。あと、近くの東小学校に友達がいるので、何回か見ました。学習した内容が書いてあって、そこがいいと思いました。」

「J-KIDSの表彰式に行ったときに、他の受賞校のホームページを全部みたんだけど、西小学校のほかにも、いいホームページがいっぱいありました。自分たちの活動が詳しく書かれていて、先生たちだけじゃなくて、生徒たちがつくっているところがすごいと思いました。つくってみたいと思いました。」

全員が、パソコンの授業は難しくなく、楽しい!と答えてくれました。日常的に慣れ親しんでいることもよくわかりました。授業で調べたことの成果をホームページでぜひ見せていただきたいと思います。ありがとうございました

保護者から高砂氏、伊藤氏

私たちが一番知りたいことは、ふだんの何気ない学校の様子です

保護者の代表として、PTA会長の高砂氏、副会長の伊藤氏にお話を伺いました。お二人は塩尻西小学校の卒業生でもあり、同校に寄せる温かい思いと信頼について語ってくださいました。

受賞への思い

「我々は二人ともこの学校の卒業生です。学区再編によって当時よりも通学区がかなり小さくなっていますが、その分、児童が自分の生まれ育った大門地区の研究を自分の総合学習のテーマにしたりですとか、地域に密着し、地域に愛される学校になりつつあるという気がします。たまたま、総務大臣賞の発表があった当日は開校50周年記念の式典を挙行しており、その最中に東京のJ-KIDS大賞表彰式会場から一報が。おめでたいことが重なり大変嬉しい気持ちです。」

「ホームページ立上げの頃は、学年の紹介があった程度。それでも他校よりはずいぶん前向きだったんですが、年を経るごとに学校からの情報発信が詳細に、また毎日更新されるようになってきました。また、本年度はブログを活用して子ども達が実際に運営したり、トラックバック機能で遠い小学校からのアクセスがあったり、相互コミュニケーション手段として非常に発展してきました。また、総合学習の一環としてメーリングリストも始まり、子ども達が研究のテーマを発表し、地域の大人たちが助言をしたりといったつながりも生まれています。」

「学校が、比較的若い中堅層の先生方に権限と責任を負わせ、やる気のある先生方がこれに応えて頑張るといった形でうまく歯車がかみあっている気がします。」

保護者が望むホームページとは

「私たちが一番知りたいことは、ふだんの何気ない授業風景や、こんなことを学校でやっているよということ。どんな些細なことでもいいので知りたい。子どもに「今日学校で何があったの?」と聞くよりも、「今日学校で○○やったんだって?」と聞くことができればコミュニケーションが全然違う。おたよりやプリントでは伝わらないものも写真や短いコメントだけで伝わるわけで、先生方の努力が分かるし、信頼関係も深まっていると感じます。」

PTAのホームページ

「学校のホームページに刺激されて、先生のアドバイスを受けながら、今年の6月にPTAでもホームページを作りました。ブログに力を入れています。役員以外の保護者にもPTA活動の内容を伝えたいと、活動の日常を日記形式で入れています。保護者から、活動の感想や、「こういうこともした方がいいんじゃないか」という提案も入ってくるようになりました。」

取材後記
地域に愛される学校であること

学校の日常を、隠さずにそして地道に伝えていくこと、塩尻西小学校でもその大切さを改めて感じました。そしてそのために、様々なご苦労をされつつも、先生方が楽しんで取り組んでおれらることがよく分かりました。塩尻西小学校の皆様、ありがとうございました。

文:J-KIDS大賞実行委員会

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