第10回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなの毎日は宝物! J-KIDS大賞2012
受賞校インタビュー

J-KIDS大賞 2010年度 受賞校インタビュー 王子小学校

総務大臣賞和歌山県 新宮市立王子小学校

王子小学校:畑下圭喜校長、谷口康則主査、山口和美栄養士、仲田留美支援教員、保護者ボランティアの皆さん、ホームページクラブ児童
取材:実行委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会事務局

王子小学校は紀伊半島南東の明るく開けた海岸近くにあり、地域と厚い信頼関係が築かれている学校です。3年前から少しずつリニューアルを重ねてきたホームページは、先生、児童、保護者、地域のプラットフォームとして、みんなが見たくなる魅力的なサイトに成長。今回の受賞に結実しました。
「みんなが誇りに思える王子小学校を目指して」。王子小学校のホームページのトップには、いつもこの言葉がかかげられていますが、この受賞によって子どもたちに大きな自信と「誇り」が芽生えたようです。

学校の視点畑下圭喜校長

学校の理念をわかりやすく楽しいコンテンツに落とし込む

このたびは栄誉ある総務大臣賞をいただきまして、とてもうれしく感じています。この賞はホームページだけでなく、地域を含めた学校全体に与えられたものだと思っています。本校の児童も、自分たちが作りあげたものが高く評価されたことで、「王子小学校ってすごい学校なんだ」「自分たちってすごいんだ」と、いい意味で自信がもてるようになりました。そうすると面白いもので、子どもたちの心のなかに「誇り」が芽生えてくるんですね。日常生活でも、「悪いことはできない」という意識が生まれていることが、みてとれます。受賞というものは結果ですが、一生懸命やったことが全国的な視点で評価されて、子どもたちの意識が開かれ、大きく成長したと思います。

また、受賞してうれしかったのが、王子小学校の卒業生から「がんばっていますね!」というお祝いの電話をいただいたことです。私は「みんなが誇りに思える王子小学校」を目標として学校づくりをしているのですが、その「みんな」は、これまでは、子ども・教職員・保護者・地域だったのですが、それに王子小学校の卒業生が加わったわけです。卒業生は物理的に学校から離れてしまっているので、特にホームページは有効な働きをすると思います。

私自身は、ホームページのなかに「校長室つうしん」というページを持って発信をしています。一昨年(2009年5月)から始めたもので、授業や行事の写真に、簡単なコメントを添えるというスタイルです。これは保護者や地域の方に学校の様子をお知らせしたいと思ってはじめたのですが、思わぬ効果がありました。普段は私と先生方は、1対1でじっくり話す機会がそれほどないのが実情です。そんなこともあり「校長室つうしん」を頻繁に見てくれるんですね。先生方は、私の文章を読むと「校長はこう見ているんだな」ということがわかる。ホームページを通じて、意思確認、意識統一ができるようになったのです。これは非常にいい効果だと思っています。

私たちのホームページは、多くの子どもたちが主体的に情報発信をしていることに高い評価をいただいていますが、掲載している写真のクオリティの高さ、そして子どもたちの顔を堂々と出していることに対しても、注目していただいています。昨今では、プライバシーや安全性の問題などから、子どもたちの写真の取り扱いについては慎重になる傾向が強いと思います。もちろん私たちも、子どもの安全を第一に考えています。でも幸いなことに、私たちの学校は、保護者の方がとても信頼してくださっていて、写真の使用についてなにか問題が発生しそうなときには保護者の方が学校を守ってくださろうとするんです。こうした体制ができているお陰で、子どもたちのいきいきした表情を撮影し、掲載することができています。

そのような信頼関係はすぐにできるものではありません。私たちは地域に対して「こんな風に子どもたちを育てたい」というメッセージを具体的に伝える努力を地道に重ねてきました。その1つの手段としてホームページがあるわけです。学校が発信したいメッセージをホームページで地域に伝え、地域がそれを受け止めて、学校を理解したり、学校へ意見を述べたりする。うれしいことに、このサイクルが良い方向にうまく回っています。今後も、ぜひこのサイクルを発展させながら、さまざまな情報を発信していきたいと思っています。

現場から谷口康則先生、山口栄養士、仲田先生、保護者ボランティアのみなさん

どんなホームページにしたいのか、強いイメージをもつことが大切

昨年度は「和歌山県代表校」に選ばれ、今年は「総務大臣賞」を受賞されましたね。これまでの取り組みの経緯について、教えてください。

谷口先生リニューアルして3年目での受賞となりました。3年前までは更新頻度の少ないホームページだったので、校長先生から依頼を受けまして私が主軸でホームページの作成に取り組むようになりました。最初は、何を目標にすればいいのか少し迷いましたが、いろいろ調べているうちにJ-KIDS大賞のことを知りました。まずは全国の学校のホームページを見て研究を重ね、どんなものをつくればいいのかというイメージを自分のなかで固めていきました。

私自身も手探りの部分が多かったのですが、ホームページ作りはやってみるとすごく楽しいんです。周囲もいろいろ関心を持ってくださるようになり、広い視野で作っていきたいと思うようになりました。それで、毎年少しずつバージョンアップしていきました。

どんな視点で、バージョンアップされたのですか。

去年までは、子どもたち自身が情報発信をするページがなかったのですが、やはりそれがなかったら魅力がないなと思いまして、今年度から子どもたちも参加する仕組み(「キッズBlog」)を作りました。また「学年のページ」では、昨年まで、私が各担任から原稿を集めて、更新作業していたので更新率があまりよくありませんでした。そこで更新自体も原稿を作った人にやってもらうよう変えてみると、更新頻度をうまくあげることが出来ました。とても小さなことですが、そういう積み重ねで少しずつ理想形に近づいていきました。校長先生が私の考えに同調してくださり、後ろ支えしてくださったことも大きな推進力となりました。

今後の課題などあれば、教えてください。

今は私が中心になってホームページの全体像から作業工程までを組み立てていますが、私や校長が転出しても、今と同じようにホームページが成長し続けていくような方法を少しずつ考えていきたいですね。この1年間は、そのあたりも意識しながら組織づくりをやってきましたが、まだちょっと心配な部分もあります。折角、いい形でホームページが機能していて、保護者や地域の方々も喜んでくれているので、担当者の個人的な資質に左右されないような、しっかりした組織を作っていきたいと思っています。

ひと手間かけた家庭用給食レシピが、家庭との架け橋に

給食レシピのページが好評だそうですね。どんなところにこだわっておられますか?

山口栄養士学校で出す給食のレシピを家庭用の分量にして公開しているのですが、単純に割り算しているのではなく、家庭用に新たにレシピを作り直しています。学校では420人分の給食を作っているのですが、そのレシピから2人分とか5人分にするときに、単に人数分で割ってしまうと全然味が違ってきてしまいます。そこで、自宅で試作して家庭用のレシピを作っています。レシピは、材料があまり多くなくて、どこの家にもある調味料で簡単に作るものを選ぶようにしています。

それから写真もビジュアルがきれいになるようにこだわっています。私自身は撮影が苦手なので、谷口先生に撮っていただいています。器は、料理に合うものを家から持参して、学校内の雰囲気のよい場所をみつけてセッティングをして撮ってもらいます。図書室には、古い木の机がありますので、その上に置いて撮影することもあります。

保護者の方から、どんな反響がありましたか?

たとえば「先生、あのレシピつくってみたよ!」「あれ載せてよ!」など声をかけてもらえるようになりました。とてもうれしいですね。子どもたちも、家庭でお母さんとレシピの話をしてくれているみたいで「ビビンバのレシピを教えてほしいって、お母さんが言ってたよ」という子がいたので、「じゃあホームページに載せるから、それを見てねと伝えて!」と返事をしたこともあります。ホームページを通じて給食を知っていただくことで、いい交流が生まれていますし、いろんな意味で安心感を与えられているのかなと思っています。

無理なく更新ができる、TT(チームティーチャー)を入れた体制

仲田先生は子どもたちの更新作業の補佐などをされているそうですが、先生方はどのような分担でホームページに関われているのか教えてください。

仲田先生もともと私はホームページクラブの担当ではないのですが、私は担任をもっていないので少し時間に余裕があります。それでお昼休みに子どもたちがパソコン室で更新するときに、お手伝いをしています。王子小学校では、谷口先生を中心として、ホームページの作業をやりやすくするように常に改善しています。たとえば「学年のページ」という各学年のブログページがあるのですが、以前は担任が授業をしながら写真を撮って記事を作ったものを、谷口先生が更新作業をされていました。ひとりで6つの学年を更新するわけですから毎日はできません。それで今年の4月からは体制を変えて、1学年につき1人のTT(チームティーチャー)の先生をホームページ担当につけて、更新作業を行ってもらうようになりました。それからは毎日更新ができるようになりました。

子どもたちの更新作業に立ち合われていて、ご苦労された点などあれば教えてください。

子どもたちは最初のころは、ホームページを更新する作業が苦手で、興味もそれほど強くはもっていませんでした。ところがデジタルカメラを機材として使用しはじめてからは、子どもたちの態度はがらりと変わりました。子どもたちはカメラにすごく興味があるんですね。写真に関心が湧くと、不思議なもので文章を書くことも好きになり、どんどん記事を書くようになりました。そうは言っても、きちんとした文章を書けるようになるまでには時間がかかりました。週に1回書いたとして、半年ぐらいはかかったでしょうか。

「学年のページ」は、保護者の方にとても好評なようです。やはり子どもたちの日々の様子が気になられるのだと思います。また、学校としてもメリットがあって、他の学年が何をやっているのかがよくわかるようになりました。ホームページは学校の先生同士にとっても、とてもよいコミュニケーションツールだと思います。

ボランティア活動の内容をブログで発信

王子小学校では、子どもの登下校の安全を見守るためのボランティア活動が行われているそうですね。どんな活動か教えてください。

「見守りボランティア」のみなさん子どもたちが登下校の際に事件に巻き込まれたりしていないかを確認するために、子どもたちのランドセルに黄色い電子タグをつけてもらっています。これは、子どもたちが正門を入ったときと帰るときに、自動的に保護者の方にメールを送信するシステムです。すごく有効なツールなのですが、機械なので電池切れやタグ自体の故障などの不具合がよく生じます。私たちは、システムの管理運用と機器の整備をしています。月曜日から金曜日まで、2人ずつで、日替わりで毎日学校に来ています。

最初はこのボランティア活動だけをやっていたのですが、手書きでいろいろ活動報告を書いていたのを谷口先生がご覧になって、「いろんな人に読んでもらおう!」と提案してくださいました。そしてホームページのなかに「ボランティアBlog」というページを立ち上げてくださったんです。先生や他の保護者の方は、ボランティア活動が行われていることは知っていても、具体的に何をしているかまではなかなかわかりません。でも、ブログができてからは、理解しやすくなったようで「ありがとう!」などの感謝の言葉もたくさんいただくようになりました。

どのような気持ちでボランティア活動に参加されるようになったのですか。

最近、子どもに関わる事件のニュースが多いので、朝、子どもを送り出すときに不安になることもあります。それで、子どもの安全を守るお手伝いができればと思って、このボランティアに参加しました。いろんな活動をしていく中で、学校の先生や学校関係者だけではなく、保護者や地域の方などの多くの方が子どもを見ていてくださることが安全つながるのだと思うようになりました。でも保護者は、子どもを通してしか学校を知ることができませんし、地域の方も子どもが小学校を卒業してしまうと、学校とは無縁になってしまいます。そういう意味で、ホームページや私たちが書くブログはとても有効だと思います。

今回、総務大臣賞というすばらしい賞をいただき、私たち保護者、地域の方々も、自分のことのように喜んでいます。王子小学校のホームページは写真への評価も高かったとうかがっていますが、子どもたちの顔が写った写真をたくさん掲載できているのは、地域の人が毎日、登下校の際にあたたかく見守ってくださっている安心感があるからだと思います。学校、育友会(保護者会)、地域の連携があってこその受賞だと思っています。これからもこのトライアングルの関係を大切にしながら子どもたちを安全にのびのびと育てられる環境を守っていきたいです。

どんな学校? ホームページは楽しい?児童の声

「ホームページづくりは、わかりやすく伝えなければいけないので、考えることも多くて大変だけど、やりがいがあります。また、写真撮影は、みんなの笑顔を写したりして、撮っているほうも楽しくなります」

「みんなが頑張ってつくったホームページが総務大臣賞に選ばれて、うれしいです」

「文章を短く、わかりすく、見やすく伝えられるように頑張っています」

「最近火事が多くなっているから、できれば火事の原因など、インタビューしに行ってみたいです」

「学校から帰るとき、地域の人がいつもあいさつをしてくれます」

「ブログを見てくれる人に、何の取材をしたのかが読んでわかりやすいように気をつけています」

「大人になったら、自分のブログをつくってみたいです。楽しくておもしろいブログをつくりたいです」

編集後記
地域全体が小学校を見守っている、理想的なケース

王子小学校は地域と学校がいい信頼関係を結んでいますし、学校内のコミュニケーションも円滑で、とてもアットホームな雰囲気に包まれていました。そうした地盤があるからこそ、ホームページの更新作業の手順なども細かく改善でき、子どもの写真もたくさん掲載することができるのだと思います。このようないい仕組み作りができている学校は、和歌山県ではまだまだ少ないそうです。ぜひ学校内だけでなく、他の地域へもよい影響を与えられる方法をさぐっていただきたいと思いました。

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