第10回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなの毎日は宝物! J-KIDS大賞2012
受賞校インタビュー

J-KIDS大賞 2007年度 受賞校インタビュー (1) 亀田東小学校

経済産業大臣賞新潟県 新潟市立亀田東小学校

亀田東小学校:野川彰夫校長、鷲尾健仁教諭、児童
取材:J-KIDS大賞実行委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会事務局

学校の視点野川彰夫校長

行くのが待ち遠しい学校をめざして

本校は、新潟市の中心地より少しはずれた静かな住宅街に位置しています。昨年、校長として赴任して来たときに驚いたことは、明るく、素直な子どもたちが多いことです。亀田の穏やかな空気がその要因のひとつかもしれません。むろん、先生の言うことをただ聞けばいいのではありませんが、子どもが自分の力を発揮していくには、素直であることが大きな助けとなるかもしれません。子どもたちが先生の言葉を素直に受け止めることができる、そういう関係があれば、先生の熱心な指導により、子どもたちもより力を発揮するようになる。ですから、機会があるごとに子どもたちを褒めて、あなたたちはすぐれた力をもっているから、だからもっとがんばろうと言っています。 校長としてめざしているのは、子どもが嬉々として登校するような学校づくりです。夜になって寝る前に「明日、学校に行くのが待ち遠しいな」と感じる子どもが、全員であるのは難しくとも、9割5分でも9割7分でもいい、次第に10割に近づけるようにしていきたい。これを校長としての目標にしています。

ホームページづくり、つまり情報公開や相互の交流についての取り組みは、ここに至るまでの経験がベースとなっていると言えるかもしれません。まだ若い頃、赴任した学校では、保護者から「学校は都合の悪いことは隠す」「学校の中身を知らせないのが不満だ」と、言われたことがありました。当時は、何か事が起きたら、保護者を呼んで説明したり、校長の便りとして発信したりするといった交流があるのみでした。けれども私たちは、親御さんから大事な子どもを預かっているのです。一日8時間、年間二百日以上も教育しているけれど、それをただ通知表というかたちで報告するだけでいいのか。どうやって子どもを育て、成長させたいのか、その全体像や教育方針など、学校が自主性をもって保護者に詳しく発信して行く必要があるのではないか。自らが次第に責任ある立場になるにつれ、説明責任を強く感じるようになっていました。そんな折りに出合ったのがホームページでした。

本校のホームページは担当の鷲尾先生を中心に,全職員が何かしらの形でかかわりながら一生懸命つくっていて、保護者が知りたいと思っていることのほとんどを、情報として提供できるものになっていると思います。基本は、何かあれば正直に話すこと。すると、保護者や地域の人から「いいよ、亀田東小学校がんばれ」という励ましの言葉や「ここはだめなんじゃないか」というお叱りも受ける。良い場合も悪い場合も、そうした声はしっかりと受け止め、検討し、どこに課題があるのか、分からない場合はさらに尋ねるということを繰り返しています。発信者の名前があれば必ず返事を書き、さらにこちらからも「ご意見をください」「お手伝いをお願いします」などと交流を重ねていくのです。意見を尋ねて10人でも20人でも、評価をいただく活動があれば、次年度以降も継続させるなど、学校運営の中で機能させています。

学校は子どもたちを評価するわけですが、評価は難しいものです。視線が異なれば判断も異なる。私たちの評価と、保護者や地域による評価に、ズレがあることも多い。けれどもそのズレに対し、私たちは「親がよく知らないからだ」などと決めつけることはしません。そのズレを埋めるために、例えば現在の重点目標である「自分や友達の良さを認める子どもに育っているでしょうか」という課題に対して、保護者からも評価してもらい、私たちが集計するという試みも行っています。情報をできるだけ公開し、保護者や地域からの反応を学校運営に生かすというのは、すでにどこの校長も取り組もうとしていることだと思います。本校でも、運動会などのイベントでは沢山の反応が来ますが、もちろんすべての記事に反応があるわけではありません。できる範囲で少しずつ、広げ、続けていくこと。そこで使うメディアは、インターネットであっても、手書きの便りであってもいいのです。大切なのは、学校の意欲を伝えることであり、たくさん読んでもらうことだと思います。

現場から鷲尾健仁先生

うちの学校は地域一番だ、という思いを載せて

ホームページを担うきっかけが、「悔しい思い」だったと伺いました。

鷲尾先生僕はここ亀田に生まれました。3年前に地元に戻り、本校に赴任した初日で、いい学校に来たなと感じました。職員は校章が入った名札を付けるのですが、その姿が格好良く見えたのを、今も覚えています。ところがしばらくして、保護者からのクレームが多いことに気づいたのです。保護者の中には僕のかつての同級生もいますから、酒の席でざっくばらんに話すこともあります。そんな際には「なぜあの行事がなくなったの」とか「ああいうとき学校は何を考えているの」とか、尋ねてくるわけです。僕は「君たちが考えているほど、うちの学校は悪くないし、絶対にこのエリアでは一番の学校だ」と言いたい気持ちにあふれていました。学校が誤解されていることに、悔しい思いを抱いていたのです。学校の真の姿をもっと知って欲しい、そう願っていたときに、ホームページの担当を打診されました。しかし、僕はこれまでホームページを作成した経験が全くありませんから、自己の負担を考え、とても無理だと断わりました。けれども前任の校長からは「学校のことが見えていないからこそ沸き起こるクレームが多い。技術的な課題をクリアして、どんどん情報を開示して、学校に届くクレームを、質の高い、建設的なものに変えて欲しい」と言われ、やってみようと決意したのです。

技術的なことはどのように学ばれたのですか?

近隣のホームページを手掛けている学校に聞きに行っては、情報教育部の職員と、ああだこうだ言いながら更新していったという状況です。そんな私たちの姿を見て次第に情報委員会の子どもたちから、ホームページをつくりたいという声が上がったので、一緒に情報発信をしていく体制へとシフトしていきました。もっとも初めは、ホームページビルダーでやっと1ページつくったのに、その記事はもう半年以上前のものだったとか、リンクが全部はずれていたとか、失敗もありました。やがて子どもとのやりとりから、「これって何かな」「ブログじゃない?」「これなら作文感覚でできそうだね」という声が上がったんです。そこで僕はブログを研究することを約束し、子どもたちは下級生に委員会への入会のプレゼンテーションをする際に「今年はブログに挑戦します」と宣言した。それが、今日のかたちのベースとなりました。

子どもたちに自主性があり、スムーズに活動に入ったように見受けられます。

他校との交流も自然発生でした。初めの数ヶ月は「先生、コメントって、なかなかつかないもんだね」と言っていたのですが、やがて委員会の子どもの親御さんとか、友達からコメントが入るようになりました。そしてある日突然、愛知県の学校からコメントが届いたのです。「先生、どこかの学校からコメントが来ているよ」「なんて読むんだろう」などと大騒ぎしたものですが、それが昨年の経済産業大臣賞を受賞した瀬部小学校でした。子どもたちも交流をきっかけに、他校のホームページを見るようになり、比較しながら「うちは写真よりも文章で伝えたい」とか、「新潟ならではの記事にしなきゃ」など、亀田東小ならではのホームページのかたちをイメージできるようになっていったようです。ブログに関しては、制度上は試験的なスタートでした。子どもたちもそれを知っており、何か問題が起きたら新潟市の全部の学校でブログができなくなってしまう、自分たちはお手本にならなきゃいけない、広げなければならない、という気概で取り組んでいました。

今後の展望・目標を教えてください。

最も気にとめているのは、いかにして残していくか、ということです。僕らは転勤することが前提ですが、担当者がいなくなったらおしまいではなく、後に引き継ぎ残せるようなホームページに育てなくてはなりません。それがこの学校の、そして地域の財産になると考えるからです。特に僕は生まれ住む故郷ですから、あいつがいなくなったら終わっちゃったということだけは避けたいという思いが、一層強くあるのです。そのための技術的なことでは、HTMLとブログの部分を上手く使い分けることでしょう。具体的な取り組みは、これからの課題です。

ホームページづくりに参加しています。情報委員会のみなさん

「亀田東小は、一人ひとりの心がやさしくて、元気いっぱいな小学校です」

「1年生から6年生まで、みんなで一緒に遊べるのがいいところ」

「自分のことばでいろいろな人に伝えられるホームページは、楽しいっ!」

「表彰式で、交流していた学校の友達と会えたのがうれしかった」

「クラスの友達に意見を聞いたりして、わかりやすい文章をめざしています」

「『東っ子ブログ』を見てください」

「面倒くさがらずに、毎日続けることが大切」

「たくさんの人が見てくれる、楽しいブログをつくってみたい」

取材後記
元気な学校が元気なホームページをつくる

とにかく元気いっぱいで明るい亀田東小の子どもたち。伸び伸びとした子ども本来の資質を、ホームページというツールが上手にサポートしているようです。表現する楽しさだけでなく、子どもたちは、何かを社会に向けて発信するリスクや責任も折々で感じながら、しっかり自分の足で立ち、日々成長しています。「伝わるホームページ」の核心は、エネルギッシュな学校の姿にありました。

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