第6回全日本小学校ホームぺージ大賞 みんなで応援しよう! J-KIDS大賞2008
J-KIDSひろば
J-KIDS大賞 2008年度 受賞校インタビュー (2)
経済産業大臣賞 埼玉県 寄居町立鉢形小学校
鉢形小学校:野田眞校長、小鹿原潤教諭、児童
取材:選考委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会

元気な学校生活の様子が手に取るように伝わってくる鉢形小学校のホームページ。なんといっても圧巻は、教職員、児童、PTA、サポーターなどが参加して書いている19ものブログでしょう。更新も頻繁で、学校での暮らしを多くの人々に知ってもらいたいという意欲が伝わってきます。ほかにも校内スケジュールが携帯でも確認できるよう二次元コード化するなど、細かな気配りも。
その活気ある現場をインタビューしました。

学校の視点 野田眞校長
多様なブログが学校の正直なところを伝える


本校の創立は、明治6年(1873)。周辺には歴史を辿る名跡もあり、豊かな自然も残っています。恵まれた環境のもと、地域の方々の温かな眼差しを受けて、子どもたちは明るく元気に成長しています。教育目標は、「かしこく」「やさしく」「たくましく」。自ら考え判断できる子、思いやりのある子、進んで体を鍛える子に育っていってほしい。この目標に対してどのような取り組みがなされているのか、安全で落ち着いた学校生活を過ごしているのか、多くの皆さんにご覧いただくためのツールがホームページだと思っています。

実際に、ホームページに力を注ぐようになったのは、現担当の小鹿原教諭が本校に赴任し、ホームページ担当となったことがきっかけでした。ブログをやろうと委員会での審議があり、教頭や校長もブログをやり始めました。その狙いは、子どもは日常こんなことをやっているんだよと、学校生活の正直なところを学校の外に伝えていくこと。それが、信頼ある学校づくり、開かれた学校づくりの一助になればいいと考えたのです。学校だよりや学校案内と異なり、不特定多数の読者を対象にするのがホームページの利点です。たとえ興味本位で訪れた読者であっても、鉢形小学校の生き生きとした日常を知ってもらいたい。最近では、卒業生はもとより、子どもとご家族が一緒にホームページを楽しむケースも多いようですね。ブログへのコメントも増えています。情報提供だけじゃなく、文字を通してのコミュニケーションが成立しつつあります。そのメリットも、ホームページにあると感じています。

活発な更新を継続している秘訣をよく尋ねられます。そもそもの要因は、コンピューター関係の技術を身につけた小鹿原教諭が、本校に赴任してきたことです。もし彼がいなかったら、鉢形小学校のホームページは、1回つくったら更新はなかなかできなかったことが予想されます。彼が本校のホームページの基礎を作り、ここまで高めてくれたと言っても過言ではない。さらに幸いなことに、平成17年度にJ- KIDSの新人賞をいただいたことも影響しています。その後も賞をいただいていることが、大きな励みになっています。職員は、他校など周囲から「よく更新しているね」と言われ刺激になり、アクセス数も伸び、本校はホームページがすごいんだと意識するようになった。また子どもたちは、賞をいただくことによって、いい意味でその気にさせていただいたと思います。今年度は、特に大きな賞を頂戴しましたから、取材のほか、町長はじめ、教育長など公的な場にも一緒に挨拶に出向いて励まされるなど、新たな経験を得ています。評価という結果が、力を与えてくれたと言えるでしょう。職員のほうも、それに応じて、力を身につけていきました。

むろん、担当教諭が転任になるとそこでストップするのは、最も避けねばならないこと。今まで情報を発信してご理解をいただいているのですから、継続していかねばなりません。そのためには、本校のホームページ運営委員会の内容を整えて、引き継ぐ体制を完備しておく必要があります。また今後の課題としては、PTA間のコミュニケーションをどう促していくかがあります。親同士がどうつながりを持って、子供の教育に当たればいいか。そんなアプローチが、ホームページの中でなされていくことも、視野に入れています。


現場から小鹿原潤先生
多数のブログが学校本来の姿を伝えてくれる

ブログを積極的に活用しているのが、印象的です。
ブログは手軽な反面、リスクを感じて踏み切れないでいる自治体も多いと思います。また実際のところ、行政がブログというものをどう捉えているかについては、正直なところ僕もよくわかりません。ただ、経済産業大臣賞をいただいた関連で教育長を訪ねましたら、「よく見ているよ」と感想を述べられていたので、今後のブログに関しての問題点は特段、ないと感じています。一方で、埼玉県で交流したいと思い、ブログを始めている学校を探したのですが、ほとんど存在していなかったのも事実です。そこで、「かがやく!さいたまっ子ブログ」というホームページを企画しました。ブログ運営は本校が行い、他校に登録していただいて、子どもたちに記事を上げてもらうという仕組みです。その協力を更新率の高いいくつかの学校に依頼したのですが、よい返事はいただけませんでした。ブログは気をつけて使っていれば、それほど問題など起きないのですが、リスクへの先入観もあり、広げていくにはまだ壁があります。

運営していくうえで、必要なこととは?
僕は、自分がホームページ作成の研修を受けたり、また他の教職員が更新できるように研修を実施したりしましたが、運営上、そうした技術的なことが最も大切なことであるとは思っていないのです。むしろ研修では「やっても身につかないですよ」とまで言っていたほど。なぜならホームページを更新するという仕事は、教職員が本来すべき仕事ではないからです。例えばエクセルの研修ならば、いろいろと役立つので学ぶ方も真剣になりますが、ホームページに関して、そうした必要性は感じにくい。一通り更新するためのノウハウは教えましたが、結局、大部分は自分で管理していました。その状態が変化したのは、ブログを取り入れてからです。HTMLを書くのに比べ、格段に扱いやすい。簡単にアップできるということで、安全のブログや英語のブログを企画したり、記事にも広がりが出ました。とはいえコンピュータの電源を入れ、アクセスし、パスワードを入れて…という作業すら、教職員の多忙な毎日の中では手間取るもの。そこで今年度から取り入れたのが、携帯ブログです。手軽に更新できる環境を整えてようやく、皆がアップできるようになりました。

教師が携帯で記事をアップすることへの反応は?
保護者からの苦情は、一度も来ていません。アップの方法も、友人にメールするのと同様に、写真を撮り、添付し、本文を書いて送るだけ。3年生の活用が一番多いのですが、月に20件ぐらい記事を上げています。つまり、研修というよりも、操作性の方が重要であり、手軽にできることであれば児童も教職員も参加できるということなのです。まずは簡単であること。それと同時に、ブログの記事をまとめる、整理するなどの作業も必要になります。また記事が増えると煩雑になるので、トップページをわかりやすく構成する配慮も欠かせません。そうして本校には、ブログがたくさん出来上がったのです。良かったと思う点は、一人でやっていると一人の視点にしかならず、偏った見方になりかねない危険がある。しかし今なら、同じテーマを4人も5人も書くことがあるため、結果、総合的な見方ができるのです。さまざまな視点で学校の様子を紹介することによって、本来の姿に近いものを伝えることができる。それが多くのブログを活用する利点だと思っています。

昼休みはパソコン室を開放して皆で楽しんでいます! 児童の声
「みんな仲がいい学校で、けんかもあまりしません」
「運動会の準備とか掃除とか、みんなで一生懸命やります」
「写真を撮ったり、文章を書いたり。絵文字もブログに入れてみたい」
「写真はみんなに真似できないようなものを撮りたいと思っています」
「お奨めは各学年のブログ、鉢小レンジャーです。見てください」
「ほかの学校のブログにも、本当に友達としゃべっている感覚で書いています」


編集後記 
伝えていくという努力


小学校ホームページは、学校生活の生き生きとした日常を伝えながら、保護者はもとより、地域や社会とつないでいく役割を果たしています。日々子どもが感じたこと、感動したこと、悩んだこと。そうした全てを素直に伝え、記録していくこと。鉢形小学校のホームページは、かけがえのない情報がつまっているとともに、成長の記録でもあるのです。