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J-KIDS大賞2007年度受賞校インタビュー
総務大臣賞 島根県 益田市立吉田小学校
吉田小学校:村上伸悟校長、長島靖和教諭、児童
取材:J-KIDS大賞実行委員 豊福晋平、J-KIDS大賞実行委員会事務局
学校の視点 村上伸悟校長
子どもの力を伸ばすのにホームページは最適な手段
始まりは、一昨年、校長として赴任してすぐに現在メディア教育主任を務める長島先生から、ホームページを公式に立ち上げたいと相談されたことでした。丁度その頃、本校の情報を各家庭はもとより、地域にも伝えていきたいと感じていたので、まさに「渡りに船」。情報発信を目的にホームページが始まりました。けれども実際に運営し、みんなの様子を見ているうちに、すぐにその狙いは変化しました。子どもたち一人ひとりの表現力や応用力、あるいは情報を活用していく力などを育てていくのに、ホームページこそ最適なツールなのではないか、と感じたからです。学校で勉強していることをどのように社会で適用させ、活用・発展させていくか。いわば子どもたちがたくましく生きていく力をつけるためのツールとして、ホームページが役立つと気づいたのです。実際に、ホームページを立ち上げて以降、情報処理能力などで、子どもたちは力を着実に身につけ発揮しています。
子どもの意欲を育むことは、学校教育における重要なテーマです。では意欲はどのような側面から育つのでしょうか。ひとつは、学校で行っていることを理解できることがあげられます。次に、安心・安全な環境があること。そして、できた、達成したと感じる経験を多く積むこと。さらに健康であることも必要でしょう。ホームページは、この意欲を向上させる4つの側面のいずれにおいても、関わり、よりよい方向へ促すことができるのです。たとえば、以前、本校では朝ご飯を食べて登校する子どもの割合は77%に過ぎませんでした。健康保持の面で問題があると考え、栄養士を招き、これを記事にしてホームページで発信したところ理解を得て、今では95%までに改善されたという経験もあります。あるいは達成感の面では、「二重跳びが出来た」「逆上がりが出来た」といったことが、子どもの生活の中でたくさん目に見えて存在していれば、自分もがんばろう、やってみたいと感じるようになることでしょう。

子どもの動機は、さまざまなところに潜んでいるものです。本校が位置する島根県は、全国で最も知名度が低い県といわれます。しかしそこから「島根県をもっと有名にさせにゃいけん」という声が上がり、「ワースト脱出大作戦」を合言葉に、益田の魅力を探っていく総合学習とその情報発信が始まりました。これについては、当初は懐疑的な思いも抱いていました。故郷に愛着を感じるというのは、自分の経験からいっても故郷から外に出て、比較した後に芽生えるものであると思っていたからです。ところが子どもたちの様子を見ていたら、心から益田市が好きなのだということが伝わってきました。外に出て初めて故郷の良さを知るのではなく、益田や島根のことをよく知って、成長していくのです。だからやがて県外に出て行った時、彼らが感じる故郷への思いというのは、単なる望郷の念ではなく、そこにはきっと未来への提言が込められているだろうと、期待しているのです。

ホームページによる情報発信を、学校経営における方針の中核に据えていますが、その必要性をことさら周囲に説いたわけではありません。地域や保護者に情報を発信していくということを実際にやり、子どもたちがそれに応えようとがんばっている。その姿を見ていたら、説明などしなくとも、ホームページの良さが分かるからです。今回、私たちは賞をいただきました。これはやれる範囲のところで突っ走った結果だと思います。ひとつのクラスが突っ走ると、他のクラスがそれを見て、羨ましいと嫉妬しつつも、真似て学び、また自分たちなりに突っ走ってかたちにしてみる。その繰り返しがホームページになったのです。ご批判もあるかもしれないが、突っ走ることの影響力は強いし、そういう進み方があっていいじゃないか、と思っています。そうしていただいたこの賞も、新たな効果をもたらしました。「総務大臣賞をもらった学校の子なんだけ、もっとちゃんとしな、いけんよ」と、子どもたちも行動に責任を持つようになっています。いろんな面で、いい方向へ行くチャンスはある。それがホームページなのだと思います。
現場から  長島靖和先生
自己満足に終わらない、提案型のホームページを
「島根をぶち有名にする!ぷろじぇくと」など、総合学習と結びついたホームページが特徴的ですね。
自ら学び、自ら考え、自ら行動していく子どもを目指して、総合という学習をやりいたいとかねてから考えていたんです。実は、村上校長も僕も、故郷に舞い戻ったかたちで、赴任しました。その故郷には、いいところがいっぱいあるのに、伝わっていないのが歯がゆかった。子どもたちには、故郷を愛し、誇りをもってくれるようになってほしいと、総合学習の時間で地域を学び、その良さを見つけ、発表する授業を始めたのです。これをインターネットというメディアに載せたら、その思いがさまざまなかたちでリンクしたのです。テレビで紹介されるなど、予想していない方面にも広がりました。最初は自分たちにはたして何ができるのだろうかというところから始まって、それがやがて現実化した。今では子どもたちも、自分たちがやっていることが、益田や島根のためになっていると実感しているようです。

日常的に情報発信をしていく中で、保護者や地域の変化を感じましたか?
例えば、土日に子どもたちが町なかで取材していても、町の人はいぶかしがらずに「吉田小のホームページに載せるんだね、じゃあ、協力しましょう」と力を貸してくれます。あるいは、風邪が流行った時などは、ホームページのアクセス数がドッと増えたこともありました。もしホームページがなかったら、いずれの場合も、問い合わせの電話が殺到していたことでしょう。僕自身、コンビニでいきなり肩を叩かれて「がんばっとるね」と言われることもあります。保護者も地域も、ホームページを見てくれている。それをどういかしていくことができるかが、大切なのだと感じます。

良い方向に、リンクし、回転しているようですね。
校長は、みんなでがんばろうとか口で言うのではなく、まず行動を起こす。それが次の行動を呼び起こしているのだと思います。例えば年間で40回ぐらい、学校だよりを発信します。「できたでぇ、あとはブログをよろしく」と言われると、教職員もアクションしないわけにはいかないでしょう(笑)。自然と皆が動き始め、結果的に、がんばれば人口5万の益田でもこれぐらいできるんだよという方向に向かってきたのだと思います。

子どもたちは、どう変わりましたか?
子どもたちは、ホームページを始めて半年ぐらいで、ものの書き方から写真の撮り方まで、変化したのを感じましたね。日々、学んでいるんでしょう。その成長を手助けするためにも、自己満足に終わらないよう、できるだけ提案型のホームページにすることを心がけています。ただ調べて終わりなのではなく、それが町のため、人のためになるよう、提案していくのです。同時に、それをホームページで発表するだけではなく、J-KIDS大賞もそうですが、コンテストに出して評価を受けるなど、さらにもう一歩がんばれるように、しむけていく。その経験を学校に蓄積していきたいと思います。熱心な担当教諭がいるからホームページができるのだというご意見も聞きますが、実際にはいろいろな人を巻き込んで、進んでいます。僕は担当者ではありますが、決して自分一人でつくれるものではない。いろいろな人が関わって、いろいろな情報が出るから、ホームページは面白いのです。
ホームページでいろんなこと、学んでいます。  6年生のみなさん
あいさつ日本一、なかよし日本一

  「ホームページに載せるキャラクターを考えるのに苦労しています」
「どこに取材に行って何を聞いたらいいのか、わからなかった。アンケートをとるのも大変だった」
「自分でページを考えてつくるのは、個性が出てきて、面白いと思う」
「益田が有名になったのがうれしかった」
「うちの学校は、あいさつ日本一、なかよし日本一を目指しているからみんな仲が良くてけんかもない。そこがいいところだと思います」
「なかよし学校を目標に、みんながんばっているのがいいところ」
「もうすぐ卒業だけど、5年生には僕たちが卒業する前に、広報委員会の知恵を引き出してほしい。もっといいホームページにしていってください」
取材後記
子どもは学ぶきっかけを待っている

たくさんのコンテンツと、社会に向けたメッセージがぎっしり詰まった吉田小学校のホームページ。それをつくっている子どもたちは、自分たちの目で社会や地域をとらえた一人前の記者であり、表現者でもありました。何かを調べ、考え、伝え、つなげていくというホームページづくりで生じる一連の作業は、その折々で、子どもたちをたくましく成長させているようです。受け身ではなく、自ら学び、判断していく。そして感受性を磨き、仲間を増やし、地域を愛する。ホームページには、たくさんの学ぶきっかけがあふれています。

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