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『J-KIDS2007小学校ホームページサミット』リポート
講演2:『学校サイトと学校・保護者・地域連携の展望
 豊福 晋平 氏
 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授   J-KIDS大賞実行委員
 
J-KIDS大賞のコンセプトには、公教育をボトムアップの視点で組み立て直せないか、という期待があります。情報がオープンになれば、いろいろな人の目にさらされるので、特定の人からの評価しか気にしないとか、ある利権を持っている人からの使命しか受け付けないといった、従来の枠を壊す作用をもたらすはずです。つまり、オープンな情報体制になっている学校を推奨していく試みは、社会革新的な考え方に基づいているのです。学校運営がオープンな方向へと変わっていくきっかけとして、この活動は社会的に大きな役割を担っていると自負しています。 

 
私はこれまで約12年間、学校サイトについて研究してきました。学校がホームページで情報公開することは、次の3点をを可能にします。一つは、ボトムアップによる公教育です。次に、学校自ら学校不信を解決する手段を得るということ。そして、自ら学校の社会的価値を明らかにするということです。学校不信に関しては、1回目のサミットでも論じましたが、「今日の給食」「今日の授業」といった「地味でベタな情報」を毎日出していくことが、保護者にとって一番価値があることが明らかになりました。それを実直に続けることで、保護者の信頼を勝ち取ることにつながり、ひいては学校の情報公開の姿勢もポジティブなものに変えていくのです。「社会的価値」については、昨年のサミットで取り上げました。学校がインターネットを介して外側の社会と関わっていくことで、一体どのような価値が、学校や社会にもたらされるのかを、誰にでもわかるような形で説明していく努力が大切であるということをお話ししました。これを欠いては、たとえ毎日ホームページを更新し続けていても、一部のマニアックな人たちが好きでやっているのだろうといった程度で、その目的や効果を正しく理解されないままで終わってしまう恐れがあります。

 
さて、昨今、「地域教育力」という言葉がさかんに使われるようになりました。地域にはさまざまな教育資源があり、また教育というものは、学校、家庭、地域の連携により成り立っているので、これからの学校教育では、地域の有する教育力を高めていき、これを積極的に活用すべきである、という考え方です。これについては多くの人が賛同するところだと思いますが、一方でキーワードとして言葉が一人歩きをしている懸念もあります。学校では、しばしば、ある人にとっては高い価値があるものでも、他人がその価値を認識できずに見過ごしてしまうことが起こります。キーワードの一人歩きは中身が伴わない空返事のようなものなので、せっかくの成果や試みが十分理解・継承されぬまま、埋没してしまう危険が高くなります。

 
地域教育力には、3つの側面があります。一つ目は、教育ガバナンスとしての地域力です。外部評価や学校運営協議会など学校運営に保護者や市民が参画することで、地域と学校とが意志決定を共有することができます。二つ目は、教育リソースとしての地域力です。地域人材や公共施設、教材素材、あるいは地域との交流などで、地域に根ざしたリソースを教育に活かすことができます。三つ目は、教育機会としての地域コミュニティです。学校だけでなく、地域全体が子育てを行う場として捉えられれば、非常に幅の広い教育機会を共に作ることができるでしょう。教育ガバナンスや教育リソースとしての地域力は、学校側か地域側かどちらかにしかメリットがないので、たとえば、学校が一方的に地域の教育リソースを利用すれば、都合の良いただ乗りと批判されるかもしれません。ただ、教育機会としての地域力は学校と住民の双方にメリットがあるので、この段階に昇華させるのが最終的な目標になるだろうと思われます。これは、昨年のサミットで習志野市の事例を紹介した通りです。地域力を継承するにはさまざまな障壁がありますが、地域と学校とが協力すれば、地域の問題を共に解決し、地域の社会的な価値を向上させることもできるのではないか、と私は考えます。まず、地域と学校は、ともに地域の社会的資本を共有している意識を持つと共に、その価値は可視化し、広く伝えていかねばなりません。こうした発想に基づき、現在私は、世田谷区の小中連携・地域運営学校(コミュニティスクール)をITで支援するプロジェクトに取り組んでいます。これは、学校ホームページサイトのシステム開発を核に、学校経営としての広報戦略を構築し、あるいは、校務や広報の情報統合、学校の社会的価値の可視化を実現するものです。

学校サイトは、今、情報教育というよりは、学校経営や学校広報という大きな観点によって、変化し始めています。ほんの数ページからはじまる小さなホームページが、さまざまな相互連携と多様な目的によって大きな情報サイトへと成長するときには、当然、体制や課題や機能も、規模に応じて変化するので、これらに柔軟に対応可能な学校サイトの成長モデルを作っていく必要があります。どのようなかたちで、形としては残しにくい地域力を可視化してホームページに定着出来るか。それが私の今年のチャレンジです。  


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