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J-KIDS大賞2005受賞校インタビュー


経済産業大臣賞 北海道代表 斜里町立 峰浜小学校
峰浜小学校:藤田昌信校長, 内山博之教頭, 宮内盛一教諭, 山崎眞紀養護教諭,
      高橋彩子教諭, 嶺岸絵美教諭, 青木美幸介護員, 児童, 保護者の方々
取材:選考委員 豊福晋平, J-KIDS大賞実行委員会

受賞校インタビュー4校目は、J-KIDS大賞2005で、経済産業大臣賞に選ばれた斜里町立峰浜小学校です。 2005年に世界自然遺産に登録された知床半島の付け根に位置する小学校です。山村留学の受け入れや、自然愛護少年団など、この地ならではのさまざまな活動が行われています。素晴らしい大自然に囲まれ、のびのびと育つ子どもたちの様子はホームページからも手に取るように伝わってきます。伺ったのは厳寒の2月、校舎から数分歩くと海岸から流氷を見ることができました。しかし峰浜小学校はそんな寒さを感じさせない、暖かい雰囲気にあふれていました。

複数の職員の目で見た子どもの良さや成長を発信

藤田校長、内山教頭、宮内先生、山崎先生、高橋先生、嶺岸先生、青木先生にお話を伺いました。 峰浜小学校では何らかのかたちで全職員がホームページに関わっていらっしゃるそうです。 どのような協力体制でホームページを運営されていらっしゃるのでしょうか?

「今現在のスタンスとしては、各学級では、いろんな子どもたちの普段の姿や、写真を撮ってもらう。可能であれば、ブログの形で学担なり担任が発信する。ホームページ本体のほうは、撮りためた写真であるとか、主な大きな行事の写真を中心に1ページぐらいにまとめて載せる。あとは、給食センターの給食便りや保健だよりを載せています。」

「学級を持っている先生は、自分のクラスの研究内容をまとめたり、発表の内容をまとめたりしています。私は学級を持っていないのですが、自分の担当している行事とか、特に保体関係なんですが、そういう行事の後のページをまとめたり、あと、日々気がついたことをブログで書いています。修学旅行のときに宮内先生(情報教育担当)にやり方を教わり、携帯を使ってリアルタイムで更新していました。その更新は宮内先生に褒められました(笑)。教育長さんも見てくれていたようです。うれしいですね。」

また、J-KIDS大賞の受賞を機にご自身の考えに変化があった、とおっしゃる先生もいらっしゃいました。
「正直なところ、パソコンに関わることやホームページの更新とか、敬遠していたんですね。宮内先生がすごく熱心にされているのをずっとそばで見ていて、やってみたらと声もかけていただいていたのにもかかわらず。J−KIDSでベスト8に選ばれたり、大臣賞もらったって、まだ人ごとという部分があったんですよ。でも、受賞して時間が経つにつれて、実はホームページを通して、うちの学校で行っている教育活動であるとか、子どもたちの様子が日本全国に知れ渡って認められたということなんだとわかってきました。ホームページで発信していくことで読んだ人が懐かしい気持ちになったり、自分が思うところを共有してもらえたり、また、子どもが何年か経って峰浜を離れたときに、ホームページを見返してくれたらうれしいなとか、そういうことを考えるようにもなりました。」

「担任が自分のクラスの子どもだけを見ているのではなくて、どのクラスの子どもも見て、みんなで育てていこうよというところがうちの学校の特徴だと思っています。それがホームページでできるんです。複数の職員の目で見て、子どもたち個々の良いところや成長などを発信できる、本校の良さはまさにこの部分にあると、共通理解に立てたんですよね。実はつい最近なんですが(笑)。」

学校の中で話し合いの場をもち、意識を合わせたりすることは、ホームページを作り上げていく上で非常に大切なことだと思います。こうして良いチームワークができあがっているのですね。
学校経営とホームページの関係
ホームページと学校経営との関係というところでの考えをお聞きしました。
「やはり学校の教育活動の一環として、やらなきゃいけないわけですから、ホームページとふだんの教育活動とを、無関係に切り分けてしまうのではなくて、できる限り重なる部分を広くしていきたい、そういう思いを持っています。たとえば、東京の学校から鮭の飼育の関係で交流があったり、また、うちの学校で「鮭とば」を作っているんですけれども、鎌倉の小学校の子どもさんから、その「鮭とば」の作り方を教えてほしいと直接連絡をいただいたり、それから、今日もたまたま鹿児島の学校から、うちの学校に子どもから手紙が行くので、もし回答していただけるならお願いしますというメールも入っていたり。日本各地のいろいろな小学校の子どもたちとうちの子どもたちが交流するという活動を通して、ホームページだけでなくて、日常の国語の手紙の書き方だとか、一般的な教育につながる部分がたくさんあります。そんな中で、学校経営とホームページの関係を、できる限り一体化してやっていきたいなという思いがあります。」

鮭稚魚の飼育観察ブログを通じて、去る3月4日に東京の小学校と隅田川(東京都)で稚魚の合同放流会が実現したそうです。ホームページは情報開示のツールであるだけではなく、子どもたちの学校生活、学習活動に幅広くつながっているんですね。


学校の良さをもっと知らせていきたい
峰浜小学校の受賞は地元の新聞など数多くのマスコミに取り上げられました。周囲からのフィードバックは、何よりも嬉しく、やりがいにもつながります。
「峰浜小学校のホームページすごいねって言われたり、昨日、新聞に載ってたよって教えてくださったり、あと、パソコンって意外と皆さん持っていますよね。だから、たくさんの方が見たよというふうに言ってくださって。そういう反響って大きいのかなと思いました。」

しかしホームページを日々運営していても、その反応を実感することが難しいことも事実です。
「ホームページが評価されて、実感に至るまでは長いじゃないですか。今回は賞に選ばれたから、子どもたちも自分たちの活動が認められたと実感できたんだけれども、賞に選ばれなかったら、子どもたちは実感しなかったかもしれないと思うんですね。ブログだったら、コメントがきたりすることも少しあると思うんですけど、ホームページは、出しても、たまに質問のメールがきたりすることがあるくらいですよね。J−KIDSが、教育活動、学校の良さをもっと世間に知らせていきたいという思いでコンテストをやっているというのを知って、すごくうれしかったんですけど、どうやったらそれがうまくできるのかなと私も思っています。」

小学校の日常の活動を発信し、まず知ってもらう、そこからどのように地域や社会と実際につながっていくのか、そのためにはどうすればよいのか、J−KIDSも小学校とともにそれをみつけていきたいと思います。

地域で子どもたちも、学校も見守っていく

馬場さん、山我さん、綾野さん、3名の保護者の方にお話を伺いました。

地域と学校が見事に融合している峰浜小学校ですが、保護者との関わり方も大きな魅力です。
「峰浜小学校は、すべての世帯が原則としてPTA会員になっていただいている。子どもを持つ親はもちろん正会員ということなんですけれども、基本としては、小学校と全く関係ない人も含めて、自治会に入っていただくと同時に、峰浜小学校のPTA会員になっていただいている。地域を挙げて、学校と子どもたちとを見守っていくということでずっとやってきています。」

「保護者も行事の度にカメラマンをやるんですよ。特に大きな、卒業式だとか入学式になると、小さい学校で、手が足りないものですから。彼なんかもいつもカメラマン。ホームページに載っているのが結構あると思うんですけれども、そういう協力体制でこのページができているんですね。」

ホームページで「ふるさと留学」について紹介することも大きな役割のひとつとなっています。もともと役場が作っていた「ふるさと留学」のページは、2001年から学校のサイトがひきとって運営されています。この地域のよさを都会の子どもたちにも味わわせてあげたい、そんな想いがこめられています。

「2000年前後にこの地域で、「ふるさと留学」の開設がラッシュになったんですね。ところが、中身が大体同じ。ホームページを見ても、これで人が来るかなというのが正直ありました。やっぱり学校生活の状態というか、毎日のことが見えないと、親としては安心できない。距離感があると思うんですね。パンフレットとか施設紹介だとなかなか…。例えば子どもはどういうふうに過ごしていて、いじめはないのかとか、通学は大変じゃないのかとか、危ないところはないのかとか、そういうことを気にしているわけです。だけど、学校の中で毎日仲良くやっていて、温かな雰囲気があれば、ここだったら任せても大丈夫だと、どこかで考えが変わるのかなと。そういう意味では、ライブ感があるかないかというのは結構重要なキーだと思います。別にプロモーションだとは思ってないですけど、学校がベターな状況を毎日出していることが周りの人をすごく安心させている気がします。」

「「ふるさと留学」の話では、今年も、愛知県から、お母さんと子ども2人で来ているんですね。お父さんは愛知県でお仕事やっているんですけれども。地元にいるお母さんよりもお父さんのほうが学校のことをよく知っている。気になるんでしょうね。毎日サイトを見に来てくれて、ブログとか予定表とかチェックを入れて下さっている。明日は何の予定あるよねとかいって、お母さんが知らないようなことも、お父さんのほうが知っている。そういう話を聞いて、やっていてよかったなと。」

子どもたちにとって必要な教育
情報化社会において学ぶべきことが多くある中で、良い経験ができていると感じていらっしゃいます。

「小さい規模の学校なので、子ども1人1人が前に出てやらないといけないというのもあるんですけど、ホームページに関わって、自分の書いたものが出たり、発表することができたり、発言できる機会に恵まれたり、それによって社会とのつながりがあるんだよというのを、少しでも意識できるようになったんじゃないかと。」

「世間のホームページやブログを見ると、大人の作っている情報でも、かなり幼稚なのが多いですね。これ出してどうするの、これはまずいんじゃないのというのも出していますよね。だから、そういう初歩の段階を小学校、中学校で経験して、これ実名で出したのまずかったんじゃないか、そういうのを小さいうちに経験させる。これは情報につながっているんだと、無責任に出してはいけないよというのを学習するべきだと思うんですね。」

「この大賞はそれを身近にさせたという点で意義がありますよね。今まで何となく関わって、要するに苦手な、どっちかといったら引いていた子もいたと思うんですね。それが見てくれる人がいるということを実感することができた。ホームページが普通の世界になりつつあったと思うんだけど、それに拍車をかけてくれたというか。」

「こうやって評価されますよね。その評価を町としてきちっと評価し、子どもの成長のためにどんな教育があり、どんな役割を果たしているかということを、もっともっとアピールしていかなくてはならないんだろうと思います。今、いろんな事件が起きているでしょう。情報化が進んでいるがゆえに、メールのやりとりで腹立った云々という話も一方ではあるんだけれども、ホームページそのもの以前に、ふだんの生活が重要だと思うんですよ。見られる、伝える、こういう関係があれば、子どもの意識も成長し、極端な言い方だと、「悪さをしない子ども」に育っていくのではないかと。だから、そこに力をかけないで、どうやってこの社会を良くできるんだというふうに思います。実践の部分をいかに伝えていくかだと思うんです。今、日本列島のはじに立っていろんな情報を得られるということも実感できるわけですね、やっていれば。いろんな人との交流もできるわけですね。このやり方も、やっぱり作法みたいなものをこれから教えていかなきゃいけないと思うんですね。こういうことを通じて、人間性を高めるということにも貢献できるのではないかと、漠然と思います。」


Dialogue with little editors
全校児童20名、うち中学年、高学年の児童の皆さんに集まっていただきインタビューしてみました。

Q 峰浜のいいところはどこですか?

「自然に囲まれているので、自然の中で勉強したり、自然の中のものを使って何かをしたりということができて、楽しいです。夏には、キャンプをしたり、スケートとかも、地元でできるので、すごくうれしいです。」
「鮭の放流式とか、「鮭とば」作りとか、ほかのところではあんまりできないことができる。」

Q 峰浜小のホームページの自慢できるところ、見てほしいところは?

「先生たちが作っているだけじゃなくて、自分たちでも作っているページがあることです。今は、学校で育てている稚魚たちのことをブログでまとめています。」
「私たちが作ったページを見て、ほかの学校の人たちがコメントをくれたり、それを見て私たちも返事を書いたりしています。」
「今、峰浜小学校のホームページでブログとかも先生方も一緒にやってくれているので、そこで毎日ある細かなこととか、自然な姿というか、そういうところも紹介されているので、そこを見てほしいです。」

Q ブログを書くことはどうかな?

「自分が初めはこんなことを書いていたのに、今はこんなことに気づいたりする、そういうことが多くなってきて役立っています。」
「ローマ字の打ち込みは大変だけれど、みんなとあきらめないで協力しながらやっています。」
「楽しいときもあるし、つらいこともあります。今は、メンバーと順番に鮭の1日を調べて、ブログ日記をつけていて、みんなで一緒にいいブログにするようにがんばっています。」

Q J−KIDS大賞を受賞した感想は?

「ホームページが賞をとったと同時に、峰浜小学校のこととか、自然愛護少年団の活動が認められて、それがすごくうれしかったし、誇らしかったです。」
「最初は信じられなかったけど、みんなで頑張って作ってきたものが認められるのはすごくうれしかった。」
受賞はほんとうにうれしかった
最後に、藤田昌信校長に受賞への想いをお話いただきました。
4月に校長として初めてこちらの学校に来られ、J-KIDSのことを初めて知ったそうです。

「担当の宮内先生から、優秀校ぐらいを目標にしてやっていくので校長先生も協力してくれないか、とそれがスタートだったんです。ところが道の代表になり、ベスト8になり、とんとん拍子にいって、私もほんとにびっくりしたんですけどね。こんな大きな賞をいただいて、ほんとうにうれしく思っています。ホームページだけじゃなくて、日常の教育活動についても認められたというようなことで、子どもたちもきっと励みになるんじゃないかという気持ちでうれしく思っています。」
近隣の学校への影響にも期待
「毎月1回定例の校長会というのがあります。その中で、ホームページについては、できるだけ更新の頻度を上げるように、できるだけ細かく発信してほしいという話は年度当初にあったんですが、全体の中で、今年はこんなふうにやっていこうだとか、いろんな学校の教育の紹介をして、交流し合うだとか、そういう機会は実際のところはなかったんです。今回、うちの学校が経済産業大臣賞に入ったということで、近隣の学校も、それをきっかけにして、刺激になって、少しでも向上していけばいいのかなという思いはあります。あと、網走管内の中で、開かれた学校作りというテーマでレポートの発表をさせてもらったんですが、その中で学校の実態を広く発信するというか、知っていただくために、ホームページに力を入れてやっていますという紹介をしたところなんです。
うちの学校をきっかけに、ほかの学校さんにもどんどん広がってくれれば、そんなうれしいことはないと思います。」


普段の様子を外に出していくことがプラスに働く
学校と地域を挙げて今回の受賞を非常に喜んでくださっている姿が印象的でした。
あらためて、峰浜小学校ホームページと地域の深いつながりを感じることができました。

これからも自信をもって、学校の普段のありのままの様子、峰浜の素晴らしいところを日本全国、さらには世界に向けて発信し続けてほしいと思います。社会にとってはそれが嬉しく、非常に価値のある情報なのです。そしてそこにはまた、新しい出会いや発見があるのだと思います。


文:J-KIDS大賞実行委員会
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