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J-KIDS大賞2005受賞校インタビュー


J-KIDS大賞 熊本県代表 人吉市立 中原小学校
中原小学校:中村校長,溝口教諭,児童
取材:選考委員 豊福晋平, J-KIDS大賞実行委員会

アクセスするとすぐに目に飛び込んでくるのは「夢は叶う 奇跡だって起こる」─。J-KIDS大賞を受賞した熊本県人吉市中原小学校のホームページのトップには、こんな力強いメッセージが書かれています。中原小が学校教育の基本としてとらえているキャッチコピーであるばかりでなく、このメッセージを多くの人たちと共有したいという意欲を感じます。子どもたちによる手描き文字を採用するアイデアや充実したコンテンツなど、見る者を惹きつけるホームページです。魅力あふれるコンテンツが生まれている小学校には、子どもたちや先生をはじめ、地域の人々や保護者にいたる、たくさんの前向きな視点が注がれていました。

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学校の視点 中村富人校長
当たり前のことを伝えるメディア
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「夢は叶う 奇跡だって起こる」は、前任の校長が学校の目標として定めた言葉でした。私が校長として中原小に赴任した際、これはとてもいい言葉であり、また大事なことでもあるので、しっかり子どもたちに伝えていきたいと思い、キャッチフレーズとして採用しました。自分の夢を大切にするということ。勉強を頑張る、スポーツを頑張る、どんなことでもいい。それは同時に、自分を大切にすることでもあるんだよ、そういうメッセージをホームページで訴えたかったのです。これは集会など、機会あるごとに話しています。

ホームページについては、学校経営の側面で「開かれた学校づくり」を方針のひとつに掲げており、そのための具体的な取り組みとして位置づけています。よりよい学校教育の実現には、内部関係者だけでなく、外部からの意見も取り入れて評価していただく、いわゆる第三者評価の必要性があると考えるからです。そのためにはまず、学校そのものの姿を外部に伝えていかねばなりません。現在、家庭におけるコンピュータの普及率は40%くらいと聞いておりますので、ハード面はまだ不十分ですが、今からやっていくべきであると考え、情報公開に取り組んでいます。

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今回、私たちのホームページは栄えあるJ-KIDS大賞をいただきましたが、それは予想外の反響をもたらしました。外国に駐在する卒業生はメールを送ってくれました。他校からも祝辞をいただき、「地域内に日本一の学校があるのは励みになる。自分たちも中原小に負けないように頑張りたい」と言ってくださいました。新聞報道で受賞を知った地域の方からも電話が相次ぎました。70歳になるという卒業生は「まさに栄誉。受賞は限りない喜びです」という手紙を送って下さいました。私たち教職員は公務員ですから、数年の任期を受け学校に赴任します。私自身も限られた任期において、管理職として中原小を経営していく認識のもと、こちらに参りました。けれども今回の受賞を受け、そんな認識は一変いたしました。地域住民だけでなく、実に多くの皆さんが、学校にさまざまな期待を持ち、さまざまな目で見ているということがわかったからです。たかが2〜3年ではないのだ、と。特に私たち管理職は大げさかもしれませんが、学校の歴史も背負う気概がなければいけない。逆に言いますと、自分は今まで、こんなことにも気づかなかったわけです。

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中原小のホームページが注目されるようになるにつれて、その広がりや影響力も実感するようになりました。私の発言は多くの人の目にふれます。以前は行政職を担っていましたので、当時の職場では「現場ではこういう話をしているのか」と感じたことでしょう。自分が理解されるという実感と同時に、恥ずかしさも味わいました。何を伝えていけばいいのかと、この半年間は迷い、揺れました。しかしそのプロセスから私自身、成長することができたと感じます。見方や考え方が広がりました。ありがたいことです。

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中原小は、創立130年になる、歴史ある小学校です。地域住民は協力的で穏やか。OB会や老人会などによるサポーターも多く、普段から地域の方が学校にふらっとお茶を飲みに来るといった、近しい関係が築かれています。建物の一部に卒業生による寄贈などがあり、支えられてきた歴史が今に残る学校です。そうした長い歴史と地域性の中で脈々と息づいてきたものが、このホームページに表れているのではないかと思います。これからも、普通の学校生活のありのままの姿を、素直に伝えていきたいと思います。また夢も抱いています。近年は熊本でも核家族化が進み、さまざまな側面で家庭の問題が深刻化しています。しかし、家庭は大事と言いながら、学校では何もすることができません。例えば、ホームページで遠隔地のお祖父さんやお祖母さんにも呼びかけてみる。そんな家族をつなぐ役割を担うことができるのではないか、と考えています。ホームページは、当たり前のことを、当たり前に感じさせてくれるメディア。そこから夢をつないでいきたいと思います。
現場から  溝口博史先生
将来は子どもが足跡を辿れる場所に
ゼロからホームページを始めるにあたり、どのような目標を立てましたか。
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これまでの赴任先でホームページを立ち上げた経験があったので、ノウハウはある程度身に付いていました。重視したのは、肩肘はらず長く続けられるホームページにしたい、ということでした。格好つけるのではなく、子どもの姿がスーっと出るようなものにしたい。そう考えた末に一番いい方法として、子どもたちによる手書きの文字やイラストを使おうと思い立ったのです。とはいえ、手書きなどを採用すると、くだけた表現になるわけですから、はたして学校の公式ホームページとして理解が得られるかどうか、不安はありました。ともかくやってみよう、という好奇心から始まりました。

子どもたちの反応はどうでしたか。
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「ホームページで使いたいから、ちょっと文字を書いてみて」と、自分のクラスの子どもたちに呼びかけたのを始まりに、次第に対象を広げていきました。自分の作品が載るかもしれないという希望で、たくさん提出する子どももいました。「今度は君のを載せるからね」と伝えると、うれしそうな顔をしてくれます。そうして学校名だけでも40枚、イラストのストックは何百枚も集まりました。高学年の児童はパソコン委員会に入ればインプットするなど、ホームページづくりに直接的に携わっていますが、この方法ならば低学年でも参加することができます。小さなイラストを描くだけでも、描いた子どもは自分のホームページという意識を持つことができるかもしれないという期待は抱いていました。ですから今回、いろいろなかたちで児童がホームページ作りに参加している点を評価していただけたのは、とても心強かったですね。

授業風景、学校の歴史、行事など、多様なコンテンツを用意されているのも特徴です。
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例えば始業式は、学校にとっては厳粛で儀式的な行事です。それをデジカメ持参で取材するなんて不謹慎だと考える人も、中にはいることでしょう。でも中原小では、そうした場でも自由に取材し表現することを許してくれる管理職がいて同僚がいるのです。その環境や空気そのものを、ホームページで伝えられたらいいな、と思っています。

これまでの苦労やハードルは。
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スタート時は、学校も地域も、ホームページに対する意識はあまりなく、どういうものなのかイメージできない様子でした。とにかく作って、アップして、見る。それを繰り返すうちに、次第に周囲の興味も高まっていきました。今では先生方からも「次はこういう情報を載せたい」と、さまざまなアイデアが寄せられます。協力的な環境に恵まれ、特にハードルはなかったように思いますし、今はプラスの循環にあると実感します。情報を公開することで信頼を得ることができ、PTAや地域の方など参加する人が増え、内容も充実していくのです。反対に情報を閉じてしまうと、不信感が先に立ってしまうため、子どもの写真を載せるなど何か行動を起こす度に、問題視されることになってしまうようです。トラブルの多くは誤解が生んでいます。私たちは年に一回、掲載に関する取り決めを文書化し保護者の方の了解を得ていますが、任せてもらうことが前提です。山のような約款を作っているわけではありません。ともかく実践しながら信頼関係を築いていく。情報発信を続けていくと、発信側と読者の理解が促され、互いの姿も見えてくるようになります。

ホームページに、どのような可能性を感じていらっしゃいますか。
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中原小は創立して130年経ちます。また周辺は農村地域として、蓄積されてきた歴史を有しています。多くの方がこの学校を卒業してきました。そういう環境で、中原小が地域の核となってできることが何かあるのではないか、そのための窓口にホームページを活用できれば、と考えています。あるいは、子どもたちが将来、自分の人生を振り返るときに、このホームページを活用してもらえたら素晴らしいな、とも思います。お父さんが子どもに自分の小学校時代を見せてあげるときに、ホームページを使ってもらいたいのです。何十年後かをもイメージして、コンテンツを充実させていきたいと思います。ただしそのためのプランは一気に手を付けるとオーバーワークになってしまう懸念もありますから、慎重にひとつひとつ、コツコツ進めています。ブログにしても、一見つまらないだろうなと思える情報であっても、継続して発信し続けていくことが大事。やがて核のようなものが、そこに生まれてくるからです。そしてそれこそが、学校のありのままの姿を映し出していると思います。
ホームページづくりに参加しています。  パソコン委員会のみなさん
学校も地域も僕らの自慢
Dialogue with little editors
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こども達の写真
学校のできごとをできるだけ詳しく、ブログに書いています」
「書くのは大変じゃないけど、
まとめ方を思いつくまで時間がかかるときがあります
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面白い学校! 人が面白いし、先生も面白い!
「人吉のいいところは、
山に囲まれて緑がたくさんあるところ。5年生の時に授業で球磨川まで行ってビデオに撮りました。『中原小博物館』というページで紹介しているので、見て欲しいです」
みんながまた見たくなるページを作りたいです
『わたしたちの活動』に写真がたくさんあるのがうれしいです
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取材後記
学びの宝庫を記録に留める
豊かな自然に囲まれ、伸び伸び成長している子どもたち。給食を残さないようにアピールする「残さいレンジャー」は、ヒーローとして、ホームページでも紹介されています。中原小の子どもたちは、楽しみながら、モノや自然を大切にする心や思いやりなど、大切なことを身に付けているようです。取材班は、6年生からの逆取材も受けました。将来や仕事に思いを馳せ、真剣に大人の話に耳を傾ける様子は、たくましい限りでした。小学校は、学びの宝庫です。やがてその貴重な体験を振り返るとき、このホームページはかけがえのない存在と映ることでしょう。原点に導く記録であるばかりでなく、子どもたち一人ひとりがたくさんの人に支えられて成長した証でもあるからです。


取材報告:石黒知子
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