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『J-KIDS2006小学校ホームページサミット』リポート


全体討論会『技術面に関する課題と工夫について

 
愛知県小牧市立小牧南小学校は、学校用ブログを導入しています。それまで運営は1人の担当者に依存しており、ともするとブラックボックス化する懸念がありました。そこで誰もが参加しやすくなるよう、EDUCOM社の学校用ブログシステムを利用し始めました。「世界中どこからでもアクセス可能で、何より気軽に参加できるのが最大のメリットです。アップロードの承認機能を使うことで、内容に問題があるようなら管理職が一旦担当に差し戻しできるので、その理由を担当者間で閲覧しながら修正できるといった機能もあり、掲載責任に対する担当者のリスクも軽減できます。デメリットはレイアウトが単純で、トップページの構成が分野別にコントロールできないなど、意図した表現ができないこと。味気ない印象になりがちです。またリンクが貼れず、音声や動画もアップできないので、掲載には工夫が必要です。学校専用のソリューションにはまだ改良の余地が残されているのも事実ですが、こうしたツールで、ホームページづくりに拘束されるという教職員の恐怖感は多いに払拭できると思います」

 
横浜市は学校のネットワークの管理・規制が厳しい地域ですが、その中で神奈川県横浜市立千秀小学校は独自にブログシステムを開発、最新の技術を活用してユニークなホームページを運営しています。「横浜市はCGIを使えません。また市販のホームページビルダーも、一見便利なようで障壁があります。そこでグーグルマップをヒントに、エクセルでブログのようなものを実現しようと開発してみました。名前はAjax(エイジャックス)。XML(Extensible Markup Language)スプレッドシートで保存する形式で、担当者に多少のhtml知識さえあれば、誰でも簡単に、エクセルに一行追加するだけで更新できる”ブログ”です。多くの学校で試してもらえるよう、なるべく敷居の低いアプリケーションとなること、またどんなブラウザでも再現できることを重視しました。学校はおもしろい情報にあふれています。けれども自分一人で作り込んでいくと、どんどんつまらなくなってしまう。色々な人が色々な価値観で発信した方がおもしろくなる。全職員がホームページづくりに参加できるようになるのが理想だと思う。児童の参加も同様に、多くなるほうがいいと考え、私たちはPodcastingを導入しました。低学年の児童が自らICレコーダーで録音した音声を情報発信しています。世界的にも初めての試みかもしれません」

 
神奈川県横浜市立霧ヶ丘小学校からは、年々充実してきた学校間交流のあり方と、活用しているNOTAというシステムについての報告がありました。
「前任校の飯田北小学校は幸運なことに、UNIXサーバーも専用回線も、地域の方からの寄付でまかなうことができました。今から7年前には環境が整いましたので、手始めに、学校プロジェクトの対象校にどんどんメールし、交流学習を試みました。最初は40通送付しても返ったのはわずか4通。先方の環境に応じタイムラグが生じるなど、課題もありました。3年目には「子どもの広場」に参加、そこで交流した遠方の小学校とタマネギの生長を観察するというプロジェクトを、その翌年はまた別の小学校と米づくりをといった具合に、毎年交流学習を続けています。大切なのは交流目的や期間、環境などを互いに確認しながら、子どもたちの交流したい気持ちを尊重していくこと。またネットワークを広げておくことも大事です。異動先である現任校の霧が丘小学校では、昨年、武蔵工業大学の先生にNOTAというシステムを紹介していただき、交流掲示板として活用し始めました。子どもたちが使っていますが、便利で書き込みやすいと好評です」


あとがき

昨年に引き続き今年も、小学校ホームページサミットは、小学校ホームページの可能性と課題の双方がありありと浮かび上がる、リアリティのある議論の場となりました。
小学校には、人々に伝えたい、また伝えるべき情報がたくさんあります。先生たちはホームページづくりを通じて、子どもたち一人ひとりをより真剣な眼差しで見つめるようになり、学校に起きている変化にも敏感になり、子どもたちの可能性を引き出していくことに注力しています。子どもたちは、ホームページというメディアに参加する経験からメディアリテラシーを身につけ、多くのことを学び、人と交流し、社会を経験しています。また日々の出来事を観察したり表現する力も育んでいます。
その一方で課題もあります。活気あるホームページを目指し毎日更新していくには、人的負担がかかること、周囲の理解をうまく得られない場合に担当者がホームページ運営の上での問題を解決しづらいことなどです。 また、個人情報保護の観点から、情報公開における配慮も欠かせません。
しかし、これらの課題を解決していく手だてもまた、ホームページにあります。日々更新を続けていく意義は、たとえそれを明記した文言がなくても、活き活きと充実しているホームページから十二分に伝わってくるもの。そのホームページを核にして学内外への交流を広げていけば、技術的なノウハウやホームページ作成におけるヒント、さらに人材の活用や配置の課題まで、そのネットワークを通じて解決の糸口も見えてくることでしょう。 インターネットは、学校を社会にむけて開いていく扉の1つであり未来へと続く道でもあると考えます。J-KIDS大賞は、小学校ホームページに賛同する社会の輪がどんどん大きくなることを願って始まりました。歩みはゆっくりかもしれませんが、その動きは着実に進んでいるようです。このレポートも、その一助となることを願ってやみません。

J-KIDSサミット報告:石黒 知子  
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