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『J-KIDS2006小学校ホームページサミット』リポート


講演2『ウェブサイトを軸とした学校広報戦略
豊福晋平氏
国際大学グローバル・コミュニケーション・センター助教授,J-KIDS大賞実行委員

 
ことの始まりは、学校の現実が、学校ではなく外部のマスメディアによって描かれていることにあります。新聞やテレビは、学校で起きた事件や不祥事を報道しますが、話題性のあるネタしか大きく取り上げないので、あたかも全国で毎日、事件や不祥事が起こっているように感じてしまうでしょう。地域の人々は学校の現状に不安を抱き、保護者の多くは「我々の時代は安全だったのに」と嘆く。不安をあおられた保護者たちは、対立姿勢で学校に接してしまっています。学校側は生じた不安を打ち消そうと、生徒とふれあう時間を犠牲にしてまで、対外的な交渉や説得に莫大な時間や労力をかけています。さらに学校に対する攻撃を恐れる余り、情報開示には消極的になり、その閉鎖的な態度に不信感が募るという、ネガティブなループに陥っているのです。

 
本来、学校の日常は実に淡々としたものです。けれども学校は、情報を伝えるべき人に正しく学校の様子を伝える手段や方法を失っているために、本来ならば一番信頼してもらわねばならない人々さえ、誤解させたままになっているのです。私は、このネガティブなループを打破するのに有効な手段が、学校ホームページだと考えます。

学校ホームページの本来の意義は、マスメディアによる学校に対する情報量を圧倒し、現実の学校の様子を理解してもらうことで、学校への信頼回復を促すことにあります。信頼を回復すべき相手とは、保護者など直接の関係者はもちろんのこと、地域の人々も含まれることを忘れてはなりません。なぜなら学校は、子供を地域として育てるという社会的な合意によって支えられている機関であるからです。

 
そして実際、地域には、学校を良くしようと願っている市民、いわば「潜在的ステークホルダー」がたくさんいます。社会的、客観的な立場から学校に信頼を寄せ、協力したいと願っている人々です。そんな彼らと学校を結びつけるのに有効な手段が、開かれた学校ホームページなのです。ホームページがあれば、誰でもいつでも、学校の情報にアクセスし、コミュニケーションをとることができます。地域のステークホルダーに参画してもらうことで、学校をとりまくネットワークは強化されていくのです。直接的な関係者ではないので、彼らは学校と客観的に向き合うことができ、学校の協調行動も促され、社会とのバランスよい関係が築かれていきます。

 
最近は、ホームページの運営に際し、個人情報の保護にどう対応すべきかが課題となっています。子供がいきいきとしている写真を紹介することは、学校にとって価値がありますが、保護者や外部の同意を取り付けるのは簡単ではありません。説得するには、これまで申し上げたような公開する利点や情報の価値をしっかり説明できなくては、リスクばかり目に付いてしまうでしょう。まず、先生一人ひとりが潜在的ステークホルダーという存在を認識し、地域に認められる意義を理解し、ホームページを介して学校づくりに自らも参画しているのだという意識をもつことが大切です。この意識を共有することができれば、ホームページへの参画意欲は高まることでしょう。ネガティブなループを変化させる「カギ」になるはずです。

J-KIDS大賞は、学校の社会的価値を客観的に評価し、広く社会に伝えることを目指し発足されました。評価を得た学校のパフォーマンスは、さらに高まる。交流は活発になり、開かれた環境で子供たちは育まれ、社会へと羽ばたいていく。情報開示から始まるこの健全なループによって、自立的な学校づくりが各地で展開されるようになるのが私の願いです。
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